文豪とホロスコープ

星占い&読書好きが主に古今東西の文豪のホロスコープを見ていきます。ほか、読書感想や星占い関連について、日々のつれづれなど。

文豪とホロスコープ フランス作家編その15 サガン

フランソワーズ・サガンはフランスの女性作家です。
18才の時に書いた『悲しみよ、こんにちは』が大ヒットし、
一躍時代の寵児となりました。
代表作は『悲しみよ、こんにちは』『ブラームスはお好き』など。

 

・人となり
サガンは本名をフランソワーズ・コワレといい、
フランスの裕福な家庭の末っ子に生まれました。
父親にかわいがられ、恵まれた子供時代でしたが、
ちょうど第二次世界大戦が起こり、
戦争映画や戦地の写真にショックを受けた、
という繊細な子供でもあったようです。
学校時代は自然や動物好きの内気な文学少女で、
文学が大好きで、これを生涯愛したいと思っていたそうです。
後々の奔放なイメージとは大分違いますね。

 

代表作でデビュー作でもある『悲しみよ、こんにちは』を出し、
戦後の華やかな時代を象徴する作家として、
日々男性に囲まれ、酒を飲み、気晴らしに車を高速でぶっ飛ばすという
なかなか怠惰な生活を送ります。
そのせいで、生涯で二度も交通事故に遭い、後遺症にも悩まされました。
一見華やかで派手な生活には裏の理由があって、
サガンはひどい寂しがり屋だったそうです。
一瞬でもひとりでいることに耐えられず、
常に友達やボーイフレンドに傍にいてもらわないとならないという。
そのせいで酒や薬に溺れ、2004年に亡くなりました。

 

ホロスコープ解説

フランソワーズ・サガン(1935/6/21 11:00)

双子座の太陽、魚座の月、ASCは乙女座。
サガンで目を引くのは、双子座の太陽と逆行水星の
ほぼ0度のコンジャクションです。
言葉やコミュニケーションを司る双子座の太陽で、
超調子の良い水星とコンジャクションというと、
作家としてはこれ以上ない才能、とも思えますが、
なかなか逆行というのが一筋縄ではいかない感じ。
双子座の作家に多いのですが、
頭の中で話している言葉をそのまんま文章にしている感じが、
サガンも多分にします。
独特の文章は句読点が多く、話しながら言葉を選んでいるような、
アンニュイな感じがします。
本人曰く、簡潔な文章を心がけたとのことですが、
同じく双子座で水星とコンジャクションの太宰治とよく似た雰囲気の文章です。

 

逆行は話すより書く方に向くと言われていて、
どちらかというと口べたなイメージがあります。
サガンは学生だった頃は内気で、
意外と成績が良くなかったそう。
頭の回転が良すぎて逆に勉強が出来なかったとのことで、
作家じゃないですけどエジソン水瓶座太陽水星コンジャクション)とか
と同じような感じでしょうか。
この頭の良さは、大人になってからも変わらず、
孤独に耐えられないというのは
自分を本当に理解してくれる人がいない、
という思いを常に抱えていたせいかもしれません。
月が魚座で、絶妙に寂しがり屋なのもなー。

 

一方、金星は獅子座で、蠍座木星とスクエアしています。
華やかで遊び好きな少女、という感じの獅子座金星は
サガンの外面的なイメージにぴったり当て嵌まります。
ただ、木星とスクエアしているので、
それが度を超すこともしばしばありそうです。

 

そういえば、『悲しみよ、こんにちは』は最初、自伝的作品と思われたそうですが、
完全なフィクションだそうです。
太陽水星コンジャクションの作家はよく自伝的な作品を書きますが、
双子座の作家はむしろ自伝に見せかけたフィクションが得意ですね。
前に書いたラディゲの『肉体の悪魔』や太宰治の『人間失格』などなど。
虚実織り交ぜて書くというか、
書きたい主題に合わせて現実を変化させている感じがします。
太陽以外の星でも双子座が目立つ作家はフィクションが上手いという
印象があります。
サガンは他の作家ではサルトルフィッツジェラルドが好きだったそうですが、
どっちも双子座強めですね。

 

とりあえず、サガンでフランス作家編は一区切りにします。

読んでくださり、ありがとうございました!

文豪とホロスコープ フランス作家編その14 カミュ

アルベール・カミュはフランスの作家です。
当時フランスの植民地だったアルジェリア出身で、
ノーベル賞受賞作家でもあります。
代表作は『異邦人』『ペスト』評論『シーシュポスの神話』など。

 

・人となり
フランス領アルジェリアの寒村に生まれ、
貧しい家庭だったそうです。
その後奨学金をもらい大学に進むと文学を始め、
ジャーナリストになりました。
しかし、新聞に当時アルジェリアを支配していた総統府の
非人道的な行為を批判する記事を書いたため、
アルジェリアを追放されます。
その後、第二次世界大戦中、ドイツ軍占領下で出版した
『異邦人』で文名が上がった後も
ドイツ軍へのレジスタンスや
非合法の新聞を発行し、アルジェリア独立戦争への停戦呼びかけなど
政治への関心は持ち続けていたようです。

 

カミュは「不条理」の作家だと言われています。
『異邦人』とは社会的、伝統的、宗教的な慣習、
一般的な人のある種パターン化した常識から追放された存在ということです。
「不条理」というと正直意味がわかりにくいですが、
とある理由から何となく理解が進みました。
詳しいことはホロスコープ解説にて。

ホロスコープ解説

アルベール・カミュ(1913/11/7 2:00)

蠍座の太陽、水瓶座の月、ASCは乙女座です。
ぱっと見で派手なアスペクトはなく、
水瓶座天王星と蟹座の海王星、火星が
オポジションしているくらいですが、
これが彼のホロでは重要です。

カミュを理解するのに重要な人物がいて、
誰かというと、日本作家の織田作之助です。
カミュは織田作と2週間違いの生まれです。
2週間では水星や金星など多少星の配置が変わっていますが、
大筋では同じです。むしろ、動いた星が作風にどう影響しているのか、
もっとわかりやすいくらい。
一見、全然似てないよー、という感じですが、
よくよく見ていくと共通点があります。


織田作については以前書きましたが、
彼含む無頼派は旧来の伝統や慣習を相手に派手に反抗しました。
織田作の場合は社会伝統への反抗もありますが、
私小説中心の古い文壇(その象徴が志賀直哉だったりする)に反対して、
自由で新しい文学を作りたかった、ということも言っていました。
夫婦善哉』などで下町庶民の生活を描いている一方、
そのために新しい可能性をあれこれ試している小説もありますが、
日本文壇の「私小説が本当の文学で、小説家は本当のことを書かねばならない」
みたいな空気に真っ向から反対した、フィクションの面白さを追求しているもの
もよく書いています。実際、かなり面白いですが。


カミュのいう「不条理」とは社会の不条理のことです。
『異邦人』では母親の死を見ても涙を流さず、
殺人の理由を法廷で問われて「太陽のせい」と答える青年ムルソーが主人公ですが、
逆にいえば、母親の死を見れば涙を流さなければならない、
殺人をするには何か立派な動機がなければならない、
わたしが本当にどう思うかはともかくとして・・・
正直で誠実な主人公はその本当にどう思っているかを口にした結果、
変わり者、もっと言うと社会的な悪人扱いされて死刑となります。
理由を述べろと言ったから正直なことを言ったら怒られた、
というのが「不条理」ということなのだと思います。


カミュも織田作も常識の皮を被った社会規範に反対していることが
なんとなくわかります。
また、何だかんだ二人とも人情には弱いところがあるようです。
二人の違いがあるとすれば、
カミュの方がより観念的、織田作の方がより生活的、
というところでしょうか。
それぞれ月が水瓶座と乙女座なのがはっきり違いに出ています。
あとは、カミュの水星が移動して射手座に入っているので、
文体の書き味は大分違うかもしれない。
しかし、根っこというか雰囲気は似ています。
ということは、織田作も頑張ればノーベル賞取れたかもしれない、
かどうかはわかりませんが(笑)、
比較してみると分かりやすくて面白いもんですね。

文豪とホロスコープ フランス作家編その13 ラディゲ

レイモン・ラディゲはフランスの作家です。
作家でも屈指の若さである20才で夭折しました。
作品は少ないですが、代表作である『肉体の悪魔』は
フランス心理小説の最高峰と言われています。
日本作家の三島由紀夫が大ファンだったことでも有名。
代表作は『肉体の悪魔』『ドルジェル伯の舞踏会』。

 

・人となり
フランスの中流家庭に生まれ、
学生の時に文学に打ち込んで学校を放校になり、
自宅で創作や勉強をする生活を送ります。
それと同時期に年上の女性と不倫関係になります。
ただし、ラディゲにはけっこうわがままなところがあったらしく、
しょちゅう相手の人妻を泣かせていたとか。
これらは自伝的な『肉体の悪魔』に大体書いてあります。
ただし、これはいわゆる告白小説ではなく、
主人公=ラディゲではないそうです。
劇作家のジャン・コクトーと親友で、
色々な人に紹介してもらったり、出版の手助けをしてもらったり、
何かとお世話になったようです。

 

肉体の悪魔』は読んだことがありますが、
フランス恋愛小説の伝統に則った不倫の話です。しかも実話。
彼女に出会ってから、夫の目を盗んでの密会や彼女の出産と死、
その全てに「ぼく」がどう感じ、どう思ったかが
淡々と、簡潔に、一人称で語られていきます。
その心理分析の鋭さ、精確さは確かにすごかったです。
ただし、この小説が出たためにモデルとなった人妻(こちらは存命)は、
子供の父親を含め、生涯夫に疑われ続けることになりましたが。
芸術はともかく、人間的にはどうなんでしょうね。

 

三島由紀夫が彼の話が好きだったことで有名で、
少年時代のバイブルとしていたほどだそうです。
文体も真似したり、挙げ句自分がラディゲに似てると思ったそうですが、
多分そんなに似てないです。少なくともホロスコープの共通性は薄い。
三島さんて、言っちゃ悪いですけど、思い込みの激しい人なので、
私は、彼の言っていることはあんまり信じてないです。


ホロスコープ解説

 

レイモン・ラディゲ(1903/6/18 17:00)

双子座の太陽、牡羊座の月、ASCは蠍座
ぱっと見で目を引くのが、
太陽と冥王星海王星のコンジャクションと
射手座の天王星魚座木星のTスクエア、
水星、火星、土星の風のグランドトラインと
金星を含めたカイト、
十惑星のほとんど全てが何らかの形に参加している
てんこ盛りなホロスコープです。

 

心理小説の最高峰と言われた冷静な表現は
この風のグランドトラインのためでしょう。
双子座の水星の鋭い感受性と、
水瓶座土星が良く客観性が良く出ている感じです。
三島由紀夫から「エレガンスな文体」と言われたというのは、
天秤座の火星のおかげかなあ、とも思います。
双子座の太陽で風のグランドトライン持ちって、
ジャーナリストや作家として有利そうです。
実際はあんまりいませんが。
考えや言葉が溢れすぎてしまうせいでなかなか形にできないのかも、
とも思います。
また、土星と金星がオポジションしているのが面白く、
作品内で主人公は不倫相手の女性を疑いに疑います。
愛のため、嫉妬のため、あとは罪悪感のためでしょうが、
なんで、人妻はこんな奴と付き合ってるんだろう・・・
と真剣に思いました。
多分、現実のラディゲもそうだったのでしょうが、
なかなか素直に恋愛を受け取れない人だったんでしょうね。

 

で、Tスクエアの方ですが、
けっこう激しいというか、不吉な星が集まっています。
太陽と冥王星のコンジャクションとか、
それと天王星オポジションとか、
その両者が月に向かって流れ込んでいるのとかで、
こう、なにか激しい衝動のようなものを抱え込んでいたのではないかと。
肉体の悪魔』もそうですが、なんで不倫をしたかというと、
ちょうど第一次世界大戦中だったからです。
戦争中の空気はけっこう特殊ですから。
時代の閉塞感を感じていたんじゃないかなあ、と思います。

 

あとは率直に言うと、精神を病んでそうです。
ラディゲは一説では食べ物にあたって亡くなったそうですが、
身体を病んでなかったら心を病んでいたでしょう。
ラディゲのホロスコープと小説を読んでいると、
なんとなく太宰治と『人間失格』に似てる気がします。
あれも本人に似ているけれど、本人そのものではない、
「偽りの自叙伝」です。
双子座の太陽、冥王星コンジャクションのせいでしょうか、
多分、二人とも自分の本当のことはわからないのではないかと。
太宰治の文章がもうちょっと冷静になって客観的になったら
ラディゲになる感じです。おさむはかなり主観的なので。
でもそしたら、太宰治の良さが全部無くなるか。
それにしても、三島由紀夫はおさむのこと嫌いだと公言していたのに(笑)

文豪とホロスコープ フランス作家編その12 サン=テグジュペリ

年末です。

この文章を書いているのは12月の初めですが、

良い年末を!

***

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリはフランスの作家です。
あまりに長い名前と名字で、愛称はサンテックス。
パイロットでもあり、飛行士は小説内にもしばしば登場します。
代表作は『夜間飛行』『人間の土地』『星の王子さま』など。
第二次世界大戦期、飛行中に消息を絶ちました。

 

・人となり
フランス貴族の家系で、本名が
アントワーヌ・マリー・ジャン=バティスト・ロジェ・ド・サン=テグジュペリ
というとても長い名前です。ピカソみたいだ。
本によると、子供時代は父親を早くに亡くして母親に甘やかされ、
落ち着きがなくて、よくものを壊す子供だったそうです。
学校に入ってもそれは治らず、不器用で運動神経も悪く、
注意力散漫の、ひと言でいえば問題児だったそうです。
その後、自由な校風のスイスの学校へ転校したところ、
なんとか馴染むことができ、文学を始めて成績も上がったそうです。
なかなか生涯通して大人になりきれない大人だったようで、
「人生でひとつ残念なことがあるなら、それは大人になってしまったこと」
と後に書いているようです。

 

彼の代表作といえば『星の王子さま』。
日本では大人気ですが、けっこう恐ろしい話です。
愚かな大人を告発する星の王子さまは作者そのものです。
序盤で綺麗だけどわがままなバラが出てきますが、
これは作者の奥さんをモデルにしているそうです。
サン=テグジュペリは女性に対してトラウマがあって、
婚約破棄されたり、無関心だったりで、
奥さんとは上手くいっていなかったそうです。
このバラのせいで星の王子さまは傷つけられ、
旅に出て、きったねえおとなの世界を見て、
友達になったキツネに諭され、
最終的には身体を置いて魂だけ星に帰る、
つまりはまあ、自殺するという。
けっこうえげつない話です。
これ、何度読んでもメルヘンな童話に思えないんですよね。
実際、第二次世界戦争の告発のために書かれたという説もあるそうで。
そういうおとなに対して、皮肉と批判が盛大に盛り込まれているという、
あんまり楽しくない読み方もできます。
そういう読み方ばっかりしてしまうので、
わたしにとってこの本はあんまり楽しくないんですが・・・

 

ホロスコープ解説


アントワーヌ・(中略)・ド・サン=テグジュペリ(1900/6/29 9:15)

蟹座の太陽、獅子座の月、ASCは乙女。
けっこう面白くてわかりやすいホロスコープをしています。
落ち着きのない子供時代がけっこう特徴的でしたが、
月と水星がタイトにコンジャクションしています。
思ったことをそのまま口にしてしまうタイプでしょうか。
火のエレメントということもあり、落ち着きは全くなさそうです。
ただ、これだけだとまだ普通なんですが、
双子座の火星と射手座の木星天王星オポジション
その調停の位置に月と水星がいます。
火星と天王星アスペクトはかなり緊張が強いみたいで、
ストレスを抱え込みやすい。
往々にして反骨精神のカタマリみたいな人が多くて、
それがわがままと受け取られやすいようです。
その代わり夏目漱石とか谷崎潤一郎とか大物も多いです。
この影響を月がもろ受けしたのでは、とも思います。
火星も、木星天王星(しかも射手座)も、
せっかちで、まったく落ち着きはなさそうですから。
そういえば、サン=テグジュペリは飛行機操縦を天職としましたが、
双子・射手ラインぽいですね。
自由人すぎて普通の職場では働けなさそうです。


一方、太陽は土星オポジションしています。
太陽と土星アスペクトもけっこう作家には見られますが、
自分に自信がなく、コンプレックスを抱え込みやすい人が多いようです。
また、父親や男らしいものにコンプレックスを感じる人もいるようです。
江戸川乱歩とか、アンデルセンとかと同じです。
アンデルセンとかよく似ていますね。人付き合いが苦手なところとか。
しかも、太陽が蟹で土星がルーラーである山羊なので、
社会になじめない自分は駄目人間だ、とか
大人になることを強要された、とかそういう思いがあったのかもしれません。
サン=テグジュペリは作品の中で散々おとなに対して皮肉ってますが、
どうやら、おとなへのコンプレックスはここに原因があるようです。
ちなみに、『星の王子さま』以外の作品もあります。
『夜間飛行』はけっこう大人な話でした。
厳しい自然環境や仕事に立ち向かい、
時に犠牲を払いながらも職務を全うする、という感じの。
星の王子さま』感はゼロで、あれ、と思いました。
実際は、けっこう大人の人なんじゃないかな、と思います。


星の王子さま』で有名な言葉といえば、
「たいせつなものは目に見えない」でしょうか。
この星のどれかに愛する人がいると思えば、どの星も愛おしく思える・・・
いかにも愛着が強い水属性、とくに蟹座が言いそうな台詞です。
が、作者の地属性が山羊座土星しかないところも気にかかります。
物語内で語られる「おろかなおとな」が
けっこう山羊座土星っぽいところがあるなあ、と思います。
自分は山羊座に金星があるので、
なんか、ちょっと・・・と思うところもあります。

文豪とホロスコープ フランス作家編その11 ジッド

アンドレ・ジッドはフランスの作家です。
代表作は『狭き門』『贋金つくり』『法王庁の抜け穴』など。

 

・人となり

ジッドといえば、ずばり同性愛者です。
言いにくいけれど、これはどうしても避けて通れない。
あのオスカー・ワイルド(やっぱり同性愛者)と盟友で、
かなり若い頃にアフリカ旅行に行った時にハマってしまったとか。
奥さんとは結婚した後も清い関係のまま、つまりはプラトニック・ラブで、
知り合いの男の子と関係を持っていたとか。
後々にそれが奥さんに知れ渡り、
関係が冷え切り別居、さらに手紙を全部燃やされたそうです。
そりゃ燃やしますよ、当然。それに顔も見たくないでしょう。
奥さんは『狭き門』のアリサのモデルになった超真面目なキリスト教徒です。
しかも、このモデルの件も実は了承無しで、
自分をモデルにしたヒロインを無惨に死なせるというおまけ付き。
あと、男の子以外にも愛人がいて、一人女の子も生ませているそうです。
正直、この話を聞いてドン引きしました。
なので、ジッドについてあまり詳しく語りたくないんですけどね・・・
半生については自伝的作品が『狭き門』含めて複数あるので、
どうぞそちらをご覧くださいませ。

 

そんな人間的にはちょっとアレなジッドですが、
昭和の一時期日本で大流行したことがありました。
明治時代に開国して以来、ようやくフランス文学者が育ってきて、
同年代のジッドがこぞって翻訳されたためだと思います。
無頼派石川淳織田作之助はジッドの影響が強いようです。
石川淳は評論も書き、ジッドの反宗教性(後で書きますが)に
強く共感したようです。
一方、、織田作は『可能性の文学』の中で
ジッドの『贋金つくり』を面白いと褒めてました。
多分、思想のあれこれより物語の面白さに注目したのだと思われますが。
二人とも同性愛者のあれこれは知ってたのかな・・・

 

ホロスコープ解説

 

アンドレ・ジッド(1869/11/22 3:00)

蠍座の太陽、蟹座の月、ASCは天秤座。
星は全体に散らばっていますが、全体で平行四辺形を作った
ミスティックレクタングルという珍しい形を作っています。
二種類のオポジションがそれぞれセクスタイルとトラインをとったもので、
ジッドは牡牛、蟹、蠍、山羊で形成されています。
今のところ彼の他はメルヴィルでしか見たことがないです。
ものの本によると非常に安定した形で、
ジッドの場合は五つの星で形成されていますが、
水星、金星、木星天王星冥王星がそれぞれ影響を与え合っています。
物書きの星である水星が入っていることからも、
多種多様で多角的な作品が書けそうだなあ、と思います。
また、一説ではミスティックの名の通りに神秘的なものに関わりが強い、
と書いてありました。
代表作の『狭き門』で示されている通り、
ジッドはキリスト教や信仰というものに関連が深いです。

 

ただし、ジッドのキリスト教への姿勢は
どちらかといえば皮肉や批判を含んだものです。
『狭き門』のヒロインは行き過ぎた信仰のため、
孤独のうちに死ぬことを自ら選びます。
この話は一般的に言われているように美しい悲恋の一方、
人間を制限する宗教や信仰への疑惑と皮肉が感じられます。
ジッドは射手座で火星と土星がコンジャクションしています。
射手座は宗教や精神性、神秘主義に関連が深いですが、
自由を制限するようなものは、たとえ神であろうと許さない
という感じがします。
わりと何でも受け入れる魚座とは正反対です。
そういえば月射手座のユゴーも『レ・ミゼラブル』の中で
宗教や修道院について長々と批判している項がありました。

 

ただ火星と土星のコンジャクションって結構激しいところがあって、
自分の欲望にごく忠実だったり、怒りを抑えられないとか、
わざわざ法律や決まりを破るとかしそうです。
射手座だから信仰や宗教について疑問と怒りを持っている感じでしょうか。
彼の作品の『背徳者』というタイトルの話もあります。
まさか、その背教が同性愛方面に向かうとは思いもよらない。

 

文豪とホロスコープ フランス作家編その10 ルルー

ガストン・ルルーはフランスの作家です。
記者や秘書を経て、新聞小説が大ヒットしました。
代表作は『オペラ座の怪人』、ミステリの『黄色い部屋の謎』など。

 

・人となり
生家は豊かな衣料品店でしたが学校を卒業する頃に両親が相次いで亡くなり、
弟や妹を養って100万フランあった遺産を全て使ってしまったそうです。
その後、法廷記者や秘書、海外特派員として働いた後、
本格的に小説を書き、新聞に連載されて人気を博したそうです。

 

現在では怪奇小説の『オペラ座の怪人』が一番有名ですが、
推理小説界では『黄色い部屋の謎』の密室トリックが
古典ミステリの傑作として知られています。
これの探偵役ルールタビーユを主人公とした一連のシリーズがあり、
推理小説家としても人気だったそうです。
ちなみに語り手の主人公は法廷記者で、
ルルー自身の経験が活かされているようです。

 

ホロスコープ解説

ガストン・ルルー(1868/5/6 9:00)

牡牛座の太陽、蠍座の月、ASCは蟹座。
牡牛座の太陽は冥王星とコンジャクション、
蠍座の月とオポジションです。
怪奇・推理小説関係の作家は蠍座に星が入っていることが多いです。
蠍座の月ではストーカー、ヘンリー・ジェイムズ、チェスタートン
日本では坂口安吾中島敦・・・は入れていいかどうか。
中島敦とは太陽と月が同じ組み合わせで、
同じような雰囲気があるのですが。
そういえば、牡牛座は意外と推理やサスペンスに縁があるのか、
ホームズシリーズのコナン・ドイル
牡牛座で水星と冥王星がコンジャクションしています。
怪奇・サスペンス方面では、マイナーかもしれませんが
レベッカ』のデュ・モーリアも牡牛座です。

 

また、火星と海王星牡羊座でコンジャクションし、
蟹座の金星と天王星がコンジャクション、
その天王星と月がトライン、
ついでに天王星牡羊座木星がスクエアです。
想像力が豊かで人の意表を突く一方、
ちょっとやり過ぎの感もあります。
ルルーの推理作品は多くが新聞小説ということもあって、
純粋な推理というより、ロマンスやホラー色の強い部分がありました。
そのせいで読み物としてはいまいちという評価ももらっています。
オペラ座の怪人』もちょっと大袈裟で冗長だな、
というか、ドラマチック過ぎて逆に引く場面が多々あります。

 

話が前後しますが、ルルーの太陽と月はオポジションです。
そもそも蠍座の月があれなのですが、
特に子供の頃、母親ないし家族と不和にあったり、
妙に責任が重かったり、問題行動を起こしたりとか、
言っちゃなんですが、愛が足りないような家庭が多いような気がします。
前述した坂口安吾とか中島敦とか、あとは草野心平とか中原中也とか。
後の三人は皆、牡牛座が太陽で月が蠍ですが(なぜか多い)。
海外作家はそこまで詳しい事情がわからないので何とも言えませんが、
『黄色い部屋の謎』とその続編の『黒い貴婦人の香り』、
また『オペラ座の怪人』でも母親や母性の強い女性が鍵になっていることが多いな、
と感じました。
たまにくどいですが、『黄色い部屋の謎』は密室の帝王カーや、
世界中のミステリに詳しい江戸川乱歩も絶賛しているので、
ミステリ好きな方はぜひ読んでみると良いと思います。

文豪とホロスコープ フランス作家編その9 モーパッサン

クリスマス・イブです。

モーパッサンかあ、って感じですが。

***

 

ギー・ド・モーパッサンはフランスの作家です。
フロベールを師匠とし、自然主義の代表とされています。
代表作は『女の一生』『脂肪の塊』、ほか多数の短編など。

 

・人となり
フランス北部に生まれ、学校や戦争への召集を経て、
やがて役人になります。
伯父の友人だったフロベールから教えを受け、
ゾラなどと共に小説を発表し合い、
長編『女の一生』はトルストイに評価されるほどだったとか。

 

しかし、神経性の疾患で目を病み、不眠症に悩まされ
自殺未遂を起こすまでになり、
最後は精神病院で亡くなったそうです。
鉄骨を使った無骨なエッフェル塔をひどく嫌って、
わざわざエッフェル塔のレストランに通い、
「ここなら塔を眺めずに済むから」と言った、
という話を聞いたことがありましたが、
誰かと思えばモーパッサンだったらしいですね。


ホロスコープ解説

ギー・ド・モーパッサン(1850/8/5 8:00)

 

獅子座の太陽、蟹座の月、ASCは乙女座。
けっこう偏った配置の人で、
獅子座で太陽・水星がコンジャクション。
乙女座で金星・火星・木星がコンジャクション、
さらにASCの関係で乙女が第一ハウスに来るので、
なおさら強調されています。
そういえば、エッフェル塔が大嫌いだったことは先に述べましたが、
自然のもの・こと・景色が大好きな乙女座にとって、
鉄筋で作られた、いかにも人工物なエッフェル塔
お気に召すのは難しかったかもしれません。
言い表すとしたら、価値観の強い人?
自我が強くて自分の見方に絶対の自信があり、
優れた観察眼を持っている感じです。
日本では詩人の立原道造に似ている感じ。
モーパッサンの場合は太陽と月がそれぞれ調子の良いので、
なおさら自我が強そうです。

 

作品がまさしくそういう感じで、
フロベールが登場人物になりきり(憑依し)、
その人物から見える景色を同じ目線から描くのに対し、
モーパッサンは自分(作者)の立場から見える景色を
あくまでも自分の立場から描いているように思えます。
例えるなら、自分の目線をカメラにして、
見えるものをひたすら客観的に描写します。
無論、カメラで見えるのは外側のみなので、
人物の内心を描くことはできません。

 

わたしの認識として自然主義とは
「物事を客観的に描写することによって、世界のありのままの姿を描く」
ということだと思っています。
すると、誰の目にも見える事実を描く、
というのは自然主義の極地じゃないかなあ、と思います。
地属性の乙女座が強いモーパッサンからすると、
目に見える、ってところが多分ミソですね。
むしろフロベールの方が変則的で、
モーパッサンの方が一般的な自然主義っぽいです。
ある種、この芸当が出来たのは
良い意味で我が強い獅子座ならではと思います。

 

モーパッサンフロベールの弟子とされ、
両者合わせて写実主義自然主義の代表とされていますが、
おそらく、今現在で自然主義と言われているものは
モーパッサンの方に近いのでは、と思います。
だから実質上、自然主義の代表はモーパッサン
と言っていいんじゃないでしょうか。
すると、ゾラはまた別の立場になり、
いやいや他の自然主義作家もそれぞれ個性があって・・・
と切りがないですが。
それぞれ自分のやり方があって面白いですね。

 

さらに加えると、
蟹座の月と天王星冥王星セクスタイル海王星がトライン・・・
これは神経系への影響かなあ。
興味深いのは牡羊座(目や頭部)や魚座(神経系)との関わりがあるところ。
そういえばモーパッサンの小説って女主人公が多いですが、
蟹座の月の人って、作品内で女性にやたらこだわったり、
女主人公や女性一人称の作品を描くことが得意なことが多いですね。
わかりやすいのは太宰治(『女生徒』『皮膚と心』など)。
女性主人公が多いのは尾崎紅葉で、ジッドもマザコンの気があったらしいとか。
モーパッサンは子供時代に両親が離婚して、
母親に引き取られたそうなので、その影響かもしれませんが、
そういえば生涯結婚しなかったらしいです。
乙女座の影響かも知れません。
現実と理想の女性の間に溝があったのかもしれない。
なかなか興味深いものです。