文豪とホロスコープ

星占い&読書好きが主に古今東西の文豪のホロスコープを見ていきます。ほか、読書感想や星占い関連について、日々のつれづれなど。

文豪とホロスコープ ロシア作家編その1 ドストエフスキー

フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキーはロシアの作家です。
文豪、と聞けばドストエフスキーと答えが返ってくるくらいの超有名作家です。
罪と罰』『白痴』『悪霊』『カラマーゾフの兄弟』の四大長編の他、

地下室の手記』『死の家の記録』などのこゆい作品が長編短編含めて多数あります。

 

・人となり
ドス(※名前が長いので以下ドストエフスキーのことをこのように称す)の人となりを書くに当たって、
去年の神田古本市で買った太田直子著『ひらけ!ドスワールド』(2013、ACBooks)を参考にしました。
全編通してドス愛に溢れ、普通に読んでも面白い本です。
この本に倣い、私もドスと呼ばせていただきます。

ドスは1821年にロシアの下級貴族として生まれました。
貴族といってもそんな裕福ではなく、父親は医者として働いていました。
ちなみに、1821年といえばフロベールボードレールと同い年です。

子供時代は読書三昧で多少根暗だった(らしい)ドスは
兄と一緒に寄宿学校に入りますが、十代後半くらいのこと、
父親が領地の農奴に殺されるという事件が起こります。
これがドスの人生に大きな影響を与えた、と伝記などでは書かれているらしいです。
まあ影響ないわきゃないわなと思いますけど。

ともかく、学校を卒業して役所に勤めますが、一年で辞めて文筆に集中します。
そして書かれたのがデビュー作の『貧しき人々』。
これが話題になり、ドスは新進気鋭の新人として文壇に迎え入れられます。
しかし、その後は鳴かず飛ばず
そうこうしているうちに、参加していた社会主義系のサークル関係で逮捕され、
政治犯として銃殺刑の宣告を受けます。
このあたりはすごいです。
銃殺刑の宣告を受けた作家なんて世界に何人もいないでしょう。
まあ見せしめの意味が強かったらしいので、
銃殺刑を受けるほんの数分前に皇帝から恩赦が下り、シベリア流刑になります。
この頃のことは非常に衝撃的だったらしく、『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』、
他多数の作品で影響を見ることができます。
シベリアで服役し、数年経てモスクワに帰ってきて、
やっと新生ドスが誕生したわけです。

ドスといえば世界級の大文豪ですが、
実際の人となりはかなりのうっかりさんで困った人でした。
すごかったのが賭博癖と借金癖です。というか、賭博癖からの借金がひどかった。
最初の方の奥さんと不仲だったドスは別の恋人を作ってヨーロッパへと旅行に行くのですが、
ストレスのせいか、賭博に異様にのめりこんでしまった。しかも弱い。
どれくらいすごいかというと、
同じ作家仲間のツルゲーネフに借金を何度もしてついに絶縁された、
借金が払えずに同行した恋人の足下に土下座した、
などというエピソードがあります。

ちなみに、編集者から原稿料を前借りして、
「あと一ヶ月で書けなければ向こう数年間タダ働き」
という状況に追い込まれたこともありました。
この窮地にドスは口述筆記という裏技を使い、
一ヶ月で本当に作品を一本仕上げてピンチを脱しました。
もうどこからツッコんでいいのやら。
そして、この時書かれた話のタイトルが『賭博者』(笑)
もう笑うしかないじゃないですか。しかもこれで結構面白い話なのだから。
大文豪の威厳ゼロです。
結局、文豪だろうが何だろうが、ただの人間ってことですな。

にしても、〆切間近に口述筆記でかっ飛ばして書く、
って、どこかの誰かさんもやっていましたが、
いつの時代のどこの国にもこういう人がひとりはいるもんですねえ。

 

ホロスコープ解説

フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(1821/11/11 9:47)

蠍座の太陽、双子座の月、ASCは射手座。
蠍座なのはすっっっごいよく分かる。
ドスの『罪と罰』は読んだことがあるのですが、
ラスコーリニコフ青年の内面の心理が事細かに書かれています。
事細かすぎて、すっっっごく読むのに疲れます。
テンポは速めなので読みやすいのですが、いちいち感情移入していると非常に忙しない。
なので私はドスが結構苦手の部類なのですが・・・
この読みやすさは双子の月由来でしょうね。
双子座の太陽、月問わずですが、文章が読みやすい人が多い。
ドスも重苦しいイメージがありますが、意外と文章は軽やか。
カラマーゾフの兄弟』なんかは会話文がとても多い。
しかし意外なのが、射手座が強いところ。
ASCの他に水星も射手座です。
射手座の水星ってあんまり居心地が良くないと言われているので、
ほんと、結構意外でした。
蠍座太陽で射手座に水星が入っている人を見てみると、
泉鏡花、ミッチェル(月も同じ)、カミュあたりです。
なんとなーく傾向が見えてくる気がします。
けっして文章がすごく上手いとか読みやすいわけではないけれど、
人の心の奥底や心理をえぐるのが上手いって感じですかね。

さて、ドスが生まれたのは1821年です。
前も書きましたが、この年は約170年に一度の天王星海王星の合がピークの年でした。
この合に特に強い影響を受けたのがボードレールとドスです。
ドスの場合、山羊座の0度で金星、天王星海王星が合で、
そこに魚座冥王星がスクエアで横やりを入れてきます。
ドスのテーマは色々と小難しいこと言われていますが、
私としては「人(=政治)と神(=宗教)」だと思っています。
この神という概念が日本人としては理解しにくいと言われていますが、
キリスト教の神というより、良心とか善とか「何か偉大な存在」っぽくって、
むしろ、日本人の概念に近いんじゃないかなあ、とも思います。
まだ『罪と罰』しか読んでないので理解しきれていませんが…

しかしボードレールは酒とクスリと借金で苦しみましたが、
ドスは賭博と借金で苦しみました。
どうやら天王星海王星が絡むと、何かしら厄介な人になるようです。
金星と冥王星のスクエアもヤバい感じです。
日本の誇る借金王・石川啄木も金星と冥王星のきっついスクエアがあったなあ・・・

 

いろいろ書いてとても長くなりましたが、
ドスは言われているほど偉大な人間や孤高の天才ではなく(変人ではあるけど)
流刑になったり借金まみれだったり賭博にハマっちゃうような意外と人間くさくて親しみやすい人なので、
読んでみたら、意外とドスにハマっちゃうかもしれません。

文豪とホロスコープ イギリス作家編その13 デュ・モーリア

ダフネ・デュ・モーリアはイギリスの女性作家です。
知名度はあまり高くはないと思いますが、
ヒッチコック監督などの映画の原作として有名です。
代表作は『レベッカ』『鳥』『今見てはいけない』(映画では『赤い影』)など。

 

・人となり
フランス系の芸術家一族に生まれ、
小さい頃から小説を読みふけっていたそうです。
モーパッサンやオースティン、スティーブンソンが好きだったとか。
結婚し、子供も三人生まれますが、
正直、夫や子供とはあまり上手く行ってなかったらしい。
彼女は華やかな社交生活を嫌い、有名になればなるほど、
人を避けて隠遁生活の中で執筆を続けていたそうです。

 

わたしは彼女の作品が大好きなのですが(だからこそ入れたという)、
作品を総じて、不思議な雰囲気があります。
常にぼんやりとした霧が掛かって、緊張感が漂っている感じ。
一般的には恋愛小説作家とされていますが、
謎や不気味さがあり、スリルやサスペンスの要素が十分です。
なかなかつかみ所のないところも魅力です。

 

ちなみに名前の表記ですが、最近では
「ダフニ・デュ・モーリエ」
とも書かれるそうです。こちらの方が元の音に近いのだとか。
しかし、わたしは元の方が好きなのでこちらで書きます。格好いいから。

 

ホロスコープ解説

ダフネ・デュ・モーリア(1907/5/13 16:00)

牡牛座の太陽、双子座の月、ASCは天秤座。
デュ・モーリアは「ストーリーテラーの名手」と言われていますが、
これは双子座の月の影響でしょうね。
他に双子座の月といえば
ドストエフスキーサッカリー、ミッチェルなど。

特に、後の二人とは何となく似ているような感じがします。
親しみがあって特に話し言葉や会話文を多用する作家が多いように思われます。

 

以前にも数人いましたが、
1900年代は山羊座天王星と蟹座の海王星オポジションが形成され、
特に1906年と1907年はピークになり、蟹座の木星も絡んでいる年です。
デュ・モーリアはその中でもとりわけ影響を受けていて、
蟹座の木星海王星
山羊座の火星と天王星
牡羊座の金星で、Tスクエアを形成しています。

 

頂点に来るのが牡羊座の金星ですが、かなり強調されています。
彼女の書く恋愛は純愛がメインです。
主人公は利益や打算を抜いて、純粋な憧れや尊敬を持っていることが多いです。
ですが、たまにびっくりするくらい気が強い面が見えます。
たとえば『レベッカ』の序盤で、主人公を雇っている夫人への描き方。
世間的には良い人物と見なされるが、実際は世間体と醜い虚栄心の塊です。
地位の高い人物には親切にし、年下の小娘である主人公を見下しているイヤな女です。
デュ・モーリアは時に、こういう人物を徹底的に批判している話を書いています。
特に、見た目や世間体や地位や名誉という「外面」だけにとらわれている人物と、
それを賞賛する人々への批判が鋭い。
この傾向は20代の頃の初期の作品に特に強く、
見ていると胸がスカッとすることがあります。
山羊座の火星と天王星の影響も強そうです。

 

デュ・モーリアは人付き合いが苦手だったいいますが、
この配置じゃ無理もないと思います。
人付きあいそのものが嫌いなのではなく、
まったく関係ない大勢の人たちの中に入っていって、

何の中身もないお喋りをしたり、
愛想を振りまくことやおべっかを使うことが嫌いなのではと思います。
火星と天王星アスペクトはかなり緊張感が強いので。
そもそも牡牛座って親しい人たちとの付き合いはともかく、
器用に立ち回るのは苦手なイメージがあります。
ところで、デュ・モーリア両性愛者だったという説がありますが、
これだけ緊張感の強いTスクエアがあって、
何にもない普通の人だった方が驚くと思います。
ちなみに、彼女自身はやんちゃなお転婆で、男の子に生まれたかった、と回顧録に書いたそうです。

このあたりは金星と火星のハードっぽいです。


彼女のホロスコープを見ていて思いましたが、
中原中也に似ているなあ・・・、と。
ちょうど14日違いで、違うのは月と水星と、
Tスクエアの頂点が水星から金星に変わったくらいです。
面白いと思うのですが、デュ・モーリアの作品は、
「自然への回帰」、「原始的な単純と純粋への願望」と「伝統と格式」との摩擦、
がテーマになっているものが多いと後書きにありました。
伝統と格式は、世間の目や常識や良識という嘘に集約されると思いますが、
レベッカ』なんてまさにそういう感じの話です。
これらは、中原さんの詩でいうところの”思惑”に当たると思います。

 

「思惑よ、汝、暗く重き気体よ、
 我が裡より去れよかし!
 われはや単純と静けき呟きと、
 とまれ、清楚のほかを希わず。」(『山羊の歌』「羊の歌」より)

 

この”思惑”については次の詩の「憔悴」でも出てきますが、

誰かに良く思われようとか、うまく得してやろうとか、

どうやら、そういう不純な気持ちのことのようです。
何となく共通しているものがあります。
しいて違いといえば、デュ・モーリア木星海王星がタイトで、
より不思議な雰囲気が強調されているのかもしれません。
中原さんのが火星と天王星の方が強く、より社会への反抗というイメージ。
わたしは二人とも大好きなのですが、けっこう比べると似ていて面白いです。
それぞれの作品の理解にも繋がりますし。

文豪とホロスコープ イギリス作家編その12 オーウェル

ジョージ・オーウェルはイギリスの作家です。
社会主義運動家でもあり、スペイン内乱に参加した経験もあります。
代表作は『カタロニア讃歌』『動物農場』『1984年』など。

 

・人となり
本名はエリック・アーサー・ブレアといい、
植民地時代のインドで生まれました。
役人だった父親はイギリスとインドを行き来していて、
ほとんど母子家庭で育ちました。
イギリスで学校を卒業した後、
当時のビルマで役人になりますが、
父親への反発か、学校で自由な空気に触れたこともあったのか、
植民地支配の片棒を担ぐのに嫌気が差し、
仕事をやめてイギリス本国で文学を志します。

 

それまでエッセイや評論を書いていましたが、
取材のつもりでスペインの内乱に参加し、大きな影響を受けます。
そこで喉に銃弾を受けて生死の境をさまよいますが、
なんとか生き延び、後に『カタロニア讃歌』としてまとめます。

 

ビルマからイギリスに帰った後で
パリやロンドンで直接見た労働者階級の現状をエッセイにまとめているように、
オーウェルは民主社会主義社会主義ではなく)に強い関心を抱いていました。
その一方、ソ連スターリンには強く失望し、
革命についての寓話『動物農場』は
スターリンをモデルにしていると言われています。

 

ホロスコープ解説
オーウェルについては前に書いたことと重複している部分がありますが、
今のわたしが見たら、という感じで書いていきます。

 

ジョージ・オーウェル(1903/6/25 14:30)

蟹座の太陽、蟹座の月、ASCは蠍座
蟹座がぱっと見でとても強い。
太陽、月、海王星コンジャンクション
これはフィクションやファンタジーに強い配置で、
反面とても理想が高そうな人物であると思います。
高潔でロマンチックな人物ですが、
たまに理想や想像が過ぎて、現実には不可能なことをしてしまうこともあります。
オーウェルはスペインの内乱で、「革命的な状況」だと感動しますが、
まさに海王星が出ていたのかもしれません。
海王星は詩人の星と言われていますが、様々なものを酔わせます。
なので、海王星が強い人はお酒だったり、薬だったり、
何かしらに依存していることが多いです。
自分の家族や祖国のために戦うというのは、蟹座が一番興奮しそうなことで、
おそらくオーウェルはその状況に見事に酔ってしまったのでしょう。

 

さらに、この太陽などに天秤座の火星がスクエアしています。
オーウェルは『1984年』でディストピア社会を作りあげましたが、
太陽と月と海王星のみだったら理想的な社会を描きそうなものです。
ここに火星がスクエアするからかもしれない。
客観的な正しさが行き過ぎて、人の幸せな生活を脅かす社会を作り上げる。
また、射手座の天王星がいい仕事をしていて、
太陽などにオポジション魚座木星にスクエア、冥王星オポジション
Tスクエアを形成しています。
天王星は革命の星ですが、オーウェルの人生には何かと革命が関わっています。
帝国主義だったり、労働者だったり、社会主義だったり、反ファシズムだったり様々ですが、
人の自由な暮らしのために戦っているのは変わりません。

オーウェルの『1984年』は監視社会の恐ろしさについて書かれましたが、
言語についても深い考察が加えられています。
蟹座が強い一方で、
双子座の水星、天秤座の火星、水瓶座土星
グランドトラインを形成しています。
言語に関してオーウェルは、
1984年のオセアニア(舞台になる国家)で話されている
政策で簡単に略された英語(ニュースピーク)を細かく作り上げ、
付録に言語構成についての論文まで付けられている
というこだわりっぷりですが、
どうやら風のエレメントのおかげのようです。

文豪とホロスコープ イギリス作家編その11 サマセット・モーム

ウィリアム・サマセット=モームはイギリスの作家です。
20世紀初頭のイギリスで大人気になった作家で、
長編小説の他、様々な戯曲や短編を残しています。
代表作は『月と六ペンス』、『人間の絆』など。

 

・人となり
モームはイギリス人ですが、パリ生まれです。
幼い頃に母親を亡くし、10才で父も亡くして叔父に引き取られます。
厳しい叔父の元で教育を受けますが、あまり幸せな子供時代ではなかったようです。
この辺りは自叙伝的小説『人間の絆』に詳しいです。
その後、医師になろうとしますが、人付き合いが苦手で断念し、
勉強中に書いていた小説や戯曲に打ち込みます。

 

第一次世界大戦中には英国の諜報員として参加し、
後々その経験を活かしてスパイ小説を書いています。
自伝的な『人間の絆』もそうでしたが、モームは自分の見聞きしたことや、
何らかの経験を活かして小説を書くことが多いです。
経験を力にするタイプのようですが、
どちらかといえば、されたことを根に持つタイプで
小説の中に登場する嫌味な人物のモデルを現実の人物から取り、
あえてわかりやすいように書くということもしています。
仮に何か嫌なことがあっても、それを作品の中で浄化できるのは小説家の特権である
と作品内で語っていたことがありました。
モームの私生活はとても幸せだったとは言い難いものでした。
不器用な人で、社交はともかく心を開いた人付き合いが苦手で、
同性愛傾向があって奥さんと上手く行かず、離婚と再婚を繰り返していました。
よっぽどストレスたまってたんだろうなあ・・・

 

ホロスコープ解説(1874/1/25 9:10)

水瓶座の太陽、牡牛座の月、ASCは魚座
モームホロスコープはイギリス作家屈指の派手で複雑なものです。
まず、水瓶座の太陽と土星コンジャンクションし、
山羊座の最終度数近くで水星と金星がコンジャンクションし、
それらでステリウムを作っています。
太陽と水星がコンジャンクションしている作家には自伝的作品だったり、
自分の経験を活かす作家が多いのですが、
モームはその代表格です。
自伝的作品の他にも、モーム歴史小説も多く書いていたり、
『月と六ペンス』もゴーギャンの人生に取材したものですが、
やはり誰かしらの人生を自分の物にして描いています。
ここで歴史小説というのが山羊座の水星金星らしいですが。
太陽、水星、金星の何れかのコンジャンクションは人気作家が良く持っていますが、
ここに土星が関わってくるのがモームです。

 

さて、太陽近辺で十分派手ですが、そこに牡牛座の月がスクエア、
獅子座の天王星オポジション、つまりTスクエアを作っています。
牡牛座の月の人は母親と関わりの強い人で、
大デュマとかアンデルセンとか谷崎潤一郎とか、
結構マザコンっぽいのですが、
モームも子供の頃に亡くした母親にことさら強く拘っていたそうです。
親と死に別れるたり、不幸な子供時代を送ったり、
というのは月の太陽や天王星のハードアスペクトにはありますが、
かなりトラウマものだったんだろうな、と思います。

 

太陽水星に土星天王星オポジションしているアンデルセンもそうでしたが、
モームは『人間の絆』以外にも
繰り返し繰り返し、何度も自伝的作品を書いています。
自分の人生に自信が持てていないのがありありとわかる。
モームも小説を書くのは、心の傷を癒やすため、
ある種の復讐のためだったのでしょう。

文豪とホロスコープ イギリス作家編その10 H・G・ウェルズ

ハーバード・ジョージ・ウェルズはイギリスの作家です。
フランス作家のジュール・ヴェルヌと同じく、「SFの父」と呼ばれています。
代表作は『タイムマシン』『宇宙戦争』『透明人間』など。

 

・人となり
ウェルズは雑貨商人の家に生まれます。
あまり裕福ではなかったそうで、
子供の頃から奉公したり、仕事に就きますが、
あまり長続きしなかったようです。
奨学金で入った学校にて科学を学び、それから大きな影響を受けました。
正式な教員になる勉強中に肺を病み、
最終的にはジャーナリストになりました。

 

ヴェルヌ同様、タイムマシンやタコ型の火星人など、
SFの定番を作りました。
また、細菌兵器や戦車、
後の原爆など未来に登場する様々なものも予見していたそうです。

 

作家の他にも様々な活動をしていて、
社会主義運動や女性の自由権利、
後の世代のための百科事典の編纂や
戦争根絶のため国際連合の設立に尽力したことも知られています。
また、日本国憲法に影響を与えたとも言われています。
また、意外と女性関係が結構派手だったらしいです。
奥さん以外にも何人もの女性と付き合っていたとか。

 

ホロスコープ解説

ハーバート・ジョージ・ウェルズ(1866/9/21 16:30)

乙女座の太陽、水瓶座の月、ASCは水瓶座
ぱっと見で水瓶座がありますね。
ヴェルヌもそうでしたが、SFというと水瓶座、ってイメージがあります。
進歩や革命、科学技術のイメージがあるからでしょうか。
コナン・ドイル水瓶座がけっこう強いですし。

 

ただ、他の風属性が強いわけではなく、
大半は地と水のサインです。
地属性では
乙女座の水星、山羊座木星、牡牛座の冥王星のグランドトライン
という大物があります。
H・G・ウェルズはヴェルヌと同じく「SFの父」と呼ばれていますが、
実際、この二人の作風はかなり違うものです。
ヴェルヌは木星や射手座の影響か、
どちらかといえば冒険的で楽観的です。
二年間の休暇』なんて、あまりに都合良すぎる!なんて言われて
蝿の王』っていうパロディを書かれているくらい。
こちらでは無人島に漂流した少年たちが獣性を暴走させる話です。
あまりに暗そうなので読む気がしませんが・・・

対して、ウェルズのSFはかなり暗い。
『タイムマシン』も、未来では人類は発展しすぎることにより、
むしろ衰退しているという結末です。
他の話も大概気が重くなるような暗いものが多いです。
本当はそれがリアルなんでしょうけれど。
この科学への悲観というか、疑問と警鐘は
メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』を思い出します。
彼女も乙女座が強かったですね。

 

ウェルズは水属性も強いです。
蠍座の金星と土星コンジャンクション
これは牡牛座の冥王星オポジションしています(つまりはカイト)。
また、蟹座の火星と天王星コンジャンクションし、
それが牡羊座海王星とスクエアしています。
よく見ればウェルズの生年は1866年。
夏目漱石幸田露伴正岡子規尾崎紅葉
の日本明治文学黄金世代とほぼ同年代なんですね。

 

蟹座の火星と天王星コンジャンクション夏目漱石にもあります。
夏目漱石の場合は日本の家制度や伝統に向けられましたが、
ウェルズも、SF以外の作品で伝統や国家について反対しています。
社会主義運動をしたり、女性の自由恋愛を扱った話(『アン・ヴェロニカの冒険』)など、
かなり活発に社会活動をしています。
ただ、夏目漱石もそうでしたが、火星と天王星コンジャンクション
かなりストレスがたまるようなので、
派手な女性遍歴はその影響なのかもしれません。

文豪とホロスコープ イギリス作家編その9 コナン・ドイル

アーサー・イグナティウス・コナン・ドイルはイギリスの作家です。
名探偵シャーロック・ホームズは作者よりも有名ですね。
推理小説でとにかく有名ですが、歴史小説やSFものも書いていました。
代表作は『緋色の研究』を初めとしたホームズシリーズ、『失われた世界』など。

 

・人となり
アイルランド系の家庭に生まれました。
絵が得意な父親はどちらかといえば内向的で、
アルコール依存症になってしまいます。
子供たちを支えたのは母親で、文学に親しむきっかけを作り、
ドイルとは後年になっても親しく手紙のやり取りをしていたそうです。

 

長じて医者となって、アメリカで開業しましたが、
まったく客が来ない。
暇な時間に書いた小説を雑誌に送って採用されたのが、
シャーロック・ホームズものの第一作だったということは、
これまた有名な話です。
その後、やはり客の来ない医者を廃業して執筆に集中しました。

 

ドイルは本当は歴史小説などの真面目な分野で活躍したかったので、
むしろ軽い気持ちで書いたホームズが疎ましくなったこともあったそうです。
途中で話の中で死なせたりしながらも復活させ、
結局、ホームズとは引退して養蜂に励む晩年までの付き合いとなりました。

 

ホームズは置いておいて、ドイル本人は活発な人だったそうです。
学生時代、捕鯨船の船医として北極に冒険しに行ったり、
ボディビルにハマっていたこともあったり、
ご近所の野球チームに参加したり、
かなりのスポーツ好き。
ボクシングはかなり強かったらしく、
前述した捕鯨船の船員と試合して勝ったり、
ボクシングを題材にした小説も書いています。
ホームズも推理以外に拳闘を初めとした格闘が強いです。

 

また、晩年に心霊主義にはまったことも知られています。
妖精さんの写真をガチで信じたこともあるそうです。
論理主義者かと思いきや、意外な一面もあるようです。

 

ホロスコープ解説
サー・アーサー・イグナティウス・コナン=ドイル(1859/5/22 4:55)

 

双子座の太陽、水瓶座の月、ASCは双子座。

双子座で太陽、火星、木星天王星が同座、
太陽と天王星、火星と木星がそれぞれコンジャンクション
双子座がかなり強めです。
後の、同じく推理小説家のチェスタートン(ブラウン神父シリーズ)
セイヤーズ(ピーター・ウィムジイ卿シリーズ)など、
イギリス推理小説家には双子座が強い作家が多いです。
(乙女・天秤系のクリスティは少し例外)
推理小説の元祖のポーや、日本推理小説の祖の江戸川乱歩と比べて、
ドイルの推理には恐怖やサスペンス要素が少ないです。

 

双子座の推理小説家の特徴は、
特にドイルやチェスタートンで顕著ですが、
短編の中に際だったトリック、という黄金パターンが多いことです。
ドイルは『緋色の研究』や『バスカヴィル家の犬』などの長編も書いていますが、
半分以上は冒険小説です。推理は三分の一くらい。
特に有名な『まだらの紐』や『赤毛組合』(この話好き)など、
面白いのは短編が多い。
チェスタートンの長編は未読ですが、
やはり、著作のかなりの量を短編が占めています。
ユーモアが利いて、どちらかといえば短距離走が得意な双子っぽいなあ、と思います。
双子座が強い人は短編得意な人が多いですね。
思考が明晰で簡潔な表現を好むので、
あんまり長編になると息切れするんでしょうが。
また、ドイルといえば面白い文章も人気の秘訣で、
そこも文章上手な双子座らしいと思います。

 

ただし、ドイルの水星は牡牛座で、冥王星コンジャンクションしています。
これけっこう意外でした。
ホームズの推理は論理もそうですが、
優れた観察によって細かな材料を拾ってくることが底の底にあるように思います。
これは、確かに詳細な描写が得意な牡牛座らしいのかなと思います。
ただし、冥王星のせいか、つまらない詳細な描写が長々と続く時もあり、
ドイルが本当に書きたかった長編の歴史小説はむしろ不人気でした(笑)
ちなみに、ホームズのモデルになったのは大学時代の教授だそうで、
それをドイル流に直したのがホームズの手法になったのだと思います。

 

ドイルといえばスポーツ得意で冒険好きと書きましたが、
金星は牡羊座に入っています。多分ここだなと見当が付きます。
同じ火属性の射手座が旅行好きなのと同じく、
未踏の地に冒険に行ったり、身体を動かすのが好きなのはとても牡羊座らしいです。
スポーツかつ、相手と戦うボクシングなんて
ファイティングスピリッツな牡羊座っぽい。
また、冤罪事件を自己調査で解決したり、
祖国を守るために第一世界大戦で軍隊に志願したり、
正義感も強かったようです。
ただし、自分の判断による独自の正義感で、
たまに他人に迷惑をかけたりもしますが、
そこも牡羊座っぽいなと思います。

文豪とホロスコープ イギリス作家編その8 ワイルド

オスカー・ワイルドアイルランド出身のイギリスの作家です。
代表作の『ドリアン・グレイの肖像』戯曲『サロメ』など、
退廃・唯美主義的な作品で注目されました。
代表作は『ドリアン・グレイの肖像』童話『幸せの王子』など。

・人となり
本名はオスカー・フィンガル・オフレアティー・ウィルズ・ワイルド。長い。
アイルランドのダブリン出身で、オックスフォードの学生の頃は優等生だったとか。
小説や戯曲の他、シェイクスピアの劇についての批評や詩集など
お上品だった当時の伝統を否定した悪名も含めて、話題になりました。

耽美主義といえばワイルドで、
むしろ美にのみ価値を置く、唯美主義と言われています。
日本でも谷崎潤一郎佐藤春夫菊池寛あたりに影響を与えています。
痴人の愛』なんて、かなり『ドリアン・グレイの肖像』の影響が見られます。

ワイルドといえば男色家として有名です。
友人だったジッドにもアドバイスするなど、
まさしく、その道のプロです。
作品内にも具体的な描写はないものの、
かなり同性愛っぽい表現があります。
しかし、同性愛の廉で逮捕され、
亡くなる前の数年間は汚名のままで各地を放浪したとのことです。


ホロスコープ解説
オスカー・ワイルド(1854/10/16 3:00)

天秤座の太陽、獅子座の月、ASCは乙女座。

天秤座には太陽と金星が同座。
天秤座と獅子座とは、かなり美意識が高そうな人です。
前述した谷崎氏も天秤座と獅子座は強めです。

獅子座が強い作家は劇や演技に関心を持つ人が少なくありません。
獅子座作家であるエミリー・ブロンテの『嵐が丘』が劇的な小説と言われ、
他、劇作家だったり、理想の自分を演じているような自伝小説を書いていることも多いです。
『ドリアン・グレイの肖像』の中でもシェイクスピアの劇が重要な役割を持っています。
それに、外見的な若さを保ったままの主人公と、
悪事を重ね、年を取っていく肖像画と、
絵が本当の自己で、現実は仮面に過ぎないのではないか、
というテーマを読むこともできます。
理想の自分を演じる、ということは獅子座にとって重要なテーマになりえるでしょう。
ちなみに、菊池寛はこの話を読んで『藤十郎の恋』という短編を書いたそうです。
こちらにも獅子座が見て取れます。

月と蠍座の水星、牡牛座の天王星でTスクエアを作っています。
美意識と同時に自意識の強そうな人です。
また、このTスクエアは罪や善悪意識、時に宗教と関係するように思います。
ワイルドの場合は、退廃と道徳っていったところでしょうか。
彼の話に限ったことではないかもですが、
耽美は社会的な悪と表裏一体の関係にあります。
ドリアン・グレイやサロメは退廃や悪を為すことで
かえって、一層美しくなります。
心の美しさと見た目の美しさは関係せず
むしろ相反するもの、というのかもしれません。
耽美派といえばボードレールも代表的ですが、
ワイルドとはまた違った感じのようです。
ボードレールは耽溺で、ワイルドは美至上主義というか。

美しい物以外に価値はないという。

ですが、その裏で今のこの現実に美しいものは悪になる、という。

文化の批判に関しては、ワイルドはとても鋭いことを言っています。

 

ちなみに、同性愛の方のホロスコープには特徴があって、
土星が太陽や火星と強いアスペクトをしている人が多いようです。
ワイルドの場合は土星は普通ですが、
MCのごく近くに土星があります。
たしかリズ・グリーンの著作だったと思いますが、
この場合も同性愛者の傾向が出ると読んだことがあります。
母親(この場合は保護者?)との関わり方に問題があるとか。
そう考えると、ドリアンの悪の先輩との関わり方や、
ワイルドの年下の彼氏との付き合い方は、
親が子供を保護するものに似ていたのかもしれません。
ジッドのことといい、割と面倒見は良かったのかも。