文豪とホロスコープ

星占い&読書好きが主に古今東西の文豪のホロスコープを見ていきます。ほか、読書感想や星占い関連について、日々のつれづれなど。

谷崎潤一郎『痴人の愛』のナオミの謎

昨日、『痴人の愛』を読み終わりました。

もっと早く読んでも良かったかもしれない。

 

痴人の愛』とは色々と谷崎潤一郎の作品です。

ひと言で言えば、「冴えない中年がナオミという小悪魔な少女の奴隷になる話」。

ドM作家の谷崎氏のドMさがよく出ている作品、

だいたい一般のイメージはこんな感じでしょう。

けれど、実際に読んでみるとそれだけじゃないみたいです。

主人公が少女を引き取って理想通りに育てようとする様子は、

日本古典の源氏物語光源氏に通じますし、

創造主と創造物、芸術家と作品の関係に置き換えれば、

バーナード・ショーの『ピグマリオン』のパロディとも読める。

他、ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』の影響もある。

相当の教養と読書量がないと作れない話です。

谷崎氏は変態とかドMとかマザコンとか言われていますが、

わたしはそれだけの枠に収まらない作家だと思いますが。

 

それはともかく、読んでみて自分が一番興味を惹かれたのは、

ヒロインであり、半分以上主役であるナオミです。

こういう場合の女性キャラクターは作家の理想の女性像の投影、

という場合が多そうです。

理想の女性性は概ね金星で表わされますが、

谷崎氏の金星は双子座です。

これには、うーん、と思うわけです。

解説にもある通り、ナオミには教養も知性の類は欠片もありません。

ですが、男を惑わすために上手く奸計を巡らすことはできます。

双子座の金星はバカは嫌いですが、話術が巧みとか、

そういうある種の頭の良さが好ましいのかなあ、とも思います。

 

ただ――

ナオミのもうひとつの特徴は野生的であるところだと思います。

見栄っ張りで、自我が強くて、男よりよっぽど男らしい(たまに男口調になる)。

このへんが双子座っぽくはないなーと読んでいて思いました。

双子座も相当ファッションに気を使う方ですけどね、もう少しセンスは良いと思う。

 

で、作品内に何度も言及されるのですが、

ナオミは、アメリカの女優のメリー・ピクフォードに似ているらしい。

この文が何度も出てくるので、谷崎氏の好みの女優だったに違いない、

ひょっとしたら理想の女性だったのかもしれない、

と思って調べてみると、

メリー・ピクフォード(1892/4/8 02:30)

ま さ か の、

日本の作家で、谷崎氏の親友で、奥さんを巡って争った、

佐藤春夫氏と一日違い(笑)

佐藤さん逃げて!谷崎はあんたを狙ってる!

 

それは冗談として・・・

太陽は牡羊座です。アセンダント水瓶座

佐藤さんもそうなのですが、

金星は双子座の頭にあって、海王星冥王星とコンジャクションしてるんですね。

海王星冥王星の恩恵を受けて、なんとなくエロティックな魅力がありそうです。

佐藤さんも詩はすごいらしい(官能的とか何とか)、と聞いたことがあります。

それはともかく、牡羊座というのが。

野生的で、自我が強くて、まあ男らしい(そしてファッションセンスも飛んでる)。

女性でも少年っぽい感じの魅力が出てくるというか。

アセンが中性的と言われる水瓶なのもそれっぽいですね。

そして、谷崎氏の火星・木星天王星のある天秤座とオポジションの関係にあります。

天秤座の人工的で、人の手で作られた調和美と、

牡羊座の野生的で、自然そのままの生命力溢れる美は、まさに真逆です。

しかし、オポジション関係は相反しながらも強く惹かれる場合も多い。

谷崎氏としては天秤座的な美を理想としながら、

正反対の牡羊座に惹かれるものがあったのかもしれません。

 

 

ちなみに、ナオミには実際にモデルがいます。

谷崎氏の元妻の妹で、映画化した自分の作品の女優として推すなど、

ずいぶん可愛がっていたそうです。

佐藤春夫と奥さんを巡る三角関係事件の原因となった女性でもあり、

彼女に振り回されていたようです。

この女性(和嶋せい子)の誕生日が

1902/3/26

牡羊座ァ・・・

もはや呪いのようですな。

ちなみに太陽と火星がコンジャクション。

死ぬほど気が強そうです。

ひょっとすると、この自我の強さが谷崎的ポイントだったのかもしれない。

 

まとめると・・・

痴人の愛』のナオミは、

実際のモデルを参考にしつつ、谷崎氏の理想の女性観を投影したキャラクターで、

牡羊座要素を持ちつつ双子座を足したような人物」って感じでしょうか。

そして語弊のある言い方をすれば、佐藤春夫もとい、佐藤春子(笑)

 

そういう感じで、たいへん楽しく読むことができました。

他にも谷崎氏の外国コンプレックスやら美醜観やら、

興味深いところは多々ありますが・・・

谷崎氏のホロスコープはホントに奥が深くて面白いです。

ただのドMで収まりきらない作品なので、ぜひ一度、

牡羊座・双子座・佐藤春夫を念頭に読んでみてください。