文豪とホロスコープ

星占い&読書好きが主に古今東西の文豪のホロスコープを見ていきます。ほか、読書感想や星占い関連について、日々のつれづれなど。

文豪とホロスコープ フランス作家編その2 バルザック

オノレ・ド・バルザックはフランスの小説家です。
十数年にわたってパリの裏表を書いた作品群は、
登場人物が千人を超える、『人間喜劇』という生涯の大作にまとめられました。
代表作は『ゴリオ爺さん』『谷間の白百合』『ウージェニーグランデ』など。

 

・人となり
裕福な実業家の子供として生まれましたが、
母親にあまり愛されず、孤独な少年時代を過ごしたそうです。
このことが後々に影響を与えたのかもしれません。
というのは、この後の人生で滅茶苦茶な私生活を送っていたため。


バルザックといえば派手好きと大食いと借金で有名で、
さまざまな事業に手を出しては失敗し、
虚栄心を満たすために社交界に出て借金し、
死後、払いきれなかった借金は、
亡くなる数ヶ月前に結婚した奥さん(ハンスカ夫人)が払ったそう。
その借金を埋めるために作品を速書き。
夜中にコーヒーをがぶ飲みしながら朝まで執筆し、
昼に社交場に出ていくという、身体を即壊しそうなスタイルです。
その大食いのために糖尿病だったそうです。
まるでどこかの谷崎潤一郎のようです。
ちなみに、貴族の出身ではなく、
名字のドというのは見栄のための自称。
これも人となりを表わしています。


その速書きにも関わらず作品は優れたものが多く、
多数の短編長編を合わせた『人間喜劇』という大作では、
人物再登場の手法というのを使っています。
この手法は以前フォークナーの時に書きましたが、
ざっくり言うと、
ひとつの作品の傍役のAが別の作品で主役を張る
みたいな感じです。
これによって多角的な視点で物事を捉えたり、
物語の繋がりが出来るという画期的な方法で、
フォークナーやフランス作家のゾラなど後の作家で使っている人も多いです。
特にゾラは『人間喜劇』に強く影響されて
同じように多数の短編長編からなる作品群、
『ルーゴン・マッカール叢書』を書いています。


バルザックは『人間喜劇』の中で、
「パリのありとあらゆる階級と境遇」を描くことを目指しました。
そのため登場人物は貴族から庶民、老若男女、善人悪人エトセトラ、

登場人物は2000人を超えるそうです。
ものすごく幅が広い多種多様な登場人物を描ききったことに
バルザックの凄さがあると思います。
文章も推敲を繰り返しているため、
とても濃厚で、すなわち文章が長くて分厚くてたまにくどい。
すごいでっかくて甘いチョコレートパフェみたいな感じ。
誇張ではなく、ひとつのとても長い物語に人生を注ぎ込んでいる。

 

ホロスコープ解説

オノレ・ド・バルザック(1799/5/20 11:00)

牡牛座の太陽、射手座の月、Ascは獅子座。
水星も牡牛座で、文章はまさしく牡牛座の特徴が出ています。
牡牛座の作家は説明が細かくて描写が詳しい(裏を返せばくどい)ため、
必然的に文章が長くなることが多いです。
バルザックも同様、というより代表格です。
ゴリオ爺さん』で主役のゴリオ爺さんが出てくるまでに
相当長くかかりました。とにかく下宿屋の描写が長い長い!
射手座太陽的には描写ばかりで話が一向に進まないので
イライラすることも多いですが、
小説を読んでる!っていう感じがするので、嫌いではないです。

 

牡牛座の太陽ですが、双子座の木星とコンジャクションしています。
この木星が恐らく、彼のホロスコープで一番の幸運だったろうと思います。
双子座の木星を持つ作家は個々の人物描写に優れている傾向があるようです。
例を挙げれば、オースティン、ディケンズコナン・ドイル志賀直哉などなど。
個々の人物の書き分けが上手ければ群像劇に強く、
『人間喜劇』の成功はこの辺にあったのだろうなあ、と思います。

 

まあ、木星が持ってくるのは幸運ばかりではなく、
同時に散在や虚栄心も付いてきます。
牡牛と双子の太陽木星コンジャクションということは、
人からよく見られたい、という意味も込めての散財でしょうか。
さらに、この木星と月とがオポジション
月と天王星がスクエア、太陽木星冥王星とスクエア・・・
と、まあややこしいですが、まとめていうと、
虚栄心の原因は幼少期の愛情不足では、
ということ。
月と木星のハードアスペクトは、他の作家では室生犀星にあります。
(室生さんの場合は金星含めてTなのですが)
幼少期の愛情不足というか、安全な環境ではなかったのかなあと思います。
バルザックの場合は一応お金はあった家庭なので、
前述した通りに母親に可愛がられなかったこと、
寄宿学校で過ごした孤独な子供時代というところ、でしょうか。
だからこそ、注目を浴びようとして目立つ格好や散財をして
人の気を引こうとしていたのかもしれません。
その裏を返せば、どうやったら注目してもらえるのか、
人のことをよく見ているということ。
そう考えれば、あの虚栄心にも意味があった・・・のかなあ。
少なくとも、ただの贅沢好みのわがままな人ではなかったと思います。
ただ、太陽が牡牛座でASCが獅子座なので、
美味しいものを食べるのは本気で好きそうです。


私がバルザックで読んだのは『ゴリオ爺さん』くらいなのですが、
この中でゴリオ爺さんに対する目が優しいなあ、と思いました。
あまり主観的に書く人ではないようなのですが、
基本的に向けられる目は、金持ちには厳しく、貧しい人間や不幸な人には暖かいです。
バルザックは金星と火星が蟹座でコンジャクションしていて、
かなり弱者に対しては同情的です。
知識や技巧をひけらかしたり、冷笑的な部分はあまりなく、
主人公が不幸せな結果に終わっても、
向けられる目が暖かいから読後が不快にはならないというか。
案外、こういう人間性も魅力のひとつじゃないかなあ、と思います。