文豪とホロスコープ

星占い&読書好きが主に古今東西の文豪のホロスコープを見ていきます。ほか、読書感想や星占い関連について、日々のつれづれなど。

文豪とホロスコープ フランス作家編その7 デュマ・フィス(小デュマ)

アレクサンドル・デュマ・フィスはフランスの小説家、劇作家です。
同姓同名の父親と区別するため、デュマ・フィス(子)とか
小デュマと呼ばれています。
代表作は『椿姫』。

・人となり
アレクサンドル・デュマとお針子の女性との間の子で、
最初は私生児扱いでしたが、父親に認知され、
引き取られて教育を受けることができました。
代表作の『椿姫』が大ヒットし、大文豪の父親同様、
劇作家として広く名が知れ渡ったそうです。
しかし、キャラの濃すぎる偉大な父親のために、
なかなか現代では目立たないのが悲しいところ。

 

若い頃は父親の金を使って遊び回りましたが、
高級娼婦のマリー・デュプレシと出会い、
後に病死した彼女との思い出を元にして書かれたのが『椿姫』。
ちなみに、椿姫の椿の花は日本の原産で、
当時は値段の高いゴージャスな花として知られていたそうです。

この『椿姫』は小説から演劇となり、
今ではヴェルディのオペラ『ラ・トラヴィアータ』で特に有名ですが、
原作もけっこう面白いです。
詳しくはホロスコープ解説で書きますが、人柄がよく出ている感じです。

 

ホロスコープ解説
アレクサンドル・デュマ・フィス(1824/7/27 18:00)

獅子座の太陽、獅子座の月、ASCは山羊座
太陽、月、水星、金星が獅子座という、
めっちゃ獅子な感じの人です。
太陽月が同じ組み合わせな人に、日本の詩人の三好達治がいます。
実際よく似てるなあ、と思います。
というのも、代表作『椿姫』はそもそも
作者の恋人の女性を物語にすることで永遠たらしめるため、
に書かれたものだからです。
しかも、とてつもない美談にした上で。
作者は恋人に振られて別れましたが、
物語では愛のために身を引いたみたいにされているし。


『椿姫』は書き手(恐らくデュマ・フィス本人)が聞いた、
ある青年(アルフレッド)の語った思い出を聞き書きした、
「本当にあった話なんですよー」という体で進みます。
主人公の主観とアルフレッドの主観でのみ語られる、
ある種、写実主義自然主義とは対極の存在です。
そこでマルグリット(ヒロインの椿姫)は物語冒頭から既に故人のため、
生きた本物のマルグリットが語られることはないわけです。
結局、読者が知り得るのは、
恋は盲目のアルフレッドの主観で美化されたマルグリットなわけです。
三好くんも同じようなことをしていますね・・・
獅子座の男性(E・ブロンテもいるから女性もか)は
全体的に異性を素晴らしい存在みたいに捉える傾向があるようで、
理想の異性を賛美するとか、理想と現実の間に幻滅するとか、
何故かそういうテーマが多くてけっこう面白いですね。
同じ火属性でも牡羊座や射手座とはちょっと違う感じ。
獅子座はあれこれ計算を巡らすより本能的にさっと書くタイプのようなので、
自然と皆そういう主題にするのかもしれない。

 

あと、彼のホロスコープで面白いのが、
前述した太陽・水星・金星のステリウム(月は少し離れている)と、
蟹座の木星がけっこう近めにコンジャクションしているところです。
木星は富や幸運、社会的地位を意味しているとよく解釈されますが、
同時に、偉大な父親の影響をも意味します。
私の愛読書である『石井ゆかりの星占い教室のノート』の
太陽と木星アスペクトに、
「「父なるもの」に飲み込まれることも」と書いてあるのを
以前興味深く思ったのですが、彼の場合、
偉大な父親の影響が強すぎてその息子としか見られないこと、
を表わしているように見えます。
同姓同名で、いつまでもフィス、小と付くわけですし。
同じようなことはドイツ作家のフランツ・カフカにも起こっています。
偉大な父親コンプレックスです。

 

ネタバレになりますが、
『椿姫』内で、アルフレッドの父親がお節介をして
マルグリットとの間を引き裂く場面が出てきます。
ほぼアルフレッド=デュマ・フィスなので、
この父親はデュマ・ペールに当たるわけです。
現実の父親は高級娼婦をモノにした息子を誇りに思えど
身を引けということはまず言わないでしょう(意外と潔癖症なところはあるけれど)。
参考にしたというプレヴォーの『マノン・レスコー』の影響かもしれませんが、
作者の中の父親へのコンプレックスというか、反逆精神があって、
それがここに表われているようにも見ることができるので、
あー、と思います。
この作品はかなりストレートに出ているので、
ホロスコープ見ながら読むと面白いです。