文豪とホロスコープ

星占い&読書好きが主に古今東西の文豪のホロスコープを見ていきます。ほか、読書感想や星占い関連について、日々のつれづれなど。

文豪とホロスコープ イギリス作家編その13 デュ・モーリア

ダフネ・デュ・モーリアはイギリスの女性作家です。
知名度はあまり高くはないと思いますが、
ヒッチコック監督などの映画の原作として有名です。
代表作は『レベッカ』『鳥』『今見てはいけない』(映画では『赤い影』)など。

 

・人となり
フランス系の芸術家一族に生まれ、
小さい頃から小説を読みふけっていたそうです。
モーパッサンやオースティン、スティーブンソンが好きだったとか。
結婚し、子供も三人生まれますが、
正直、夫や子供とはあまり上手く行ってなかったらしい。
彼女は華やかな社交生活を嫌い、有名になればなるほど、
人を避けて隠遁生活の中で執筆を続けていたそうです。

 

わたしは彼女の作品が大好きなのですが(だからこそ入れたという)、
作品を総じて、不思議な雰囲気があります。
常にぼんやりとした霧が掛かって、緊張感が漂っている感じ。
一般的には恋愛小説作家とされていますが、
謎や不気味さがあり、スリルやサスペンスの要素が十分です。
なかなかつかみ所のないところも魅力です。

 

ちなみに名前の表記ですが、最近では
「ダフニ・デュ・モーリエ」
とも書かれるそうです。こちらの方が元の音に近いのだとか。
しかし、わたしは元の方が好きなのでこちらで書きます。格好いいから。

 

ホロスコープ解説

ダフネ・デュ・モーリア(1907/5/13 16:00)

牡牛座の太陽、双子座の月、ASCは天秤座。
デュ・モーリアは「ストーリーテラーの名手」と言われていますが、
これは双子座の月の影響でしょうね。
他に双子座の月といえば
ドストエフスキーサッカリー、ミッチェルなど。

特に、後の二人とは何となく似ているような感じがします。
親しみがあって特に話し言葉や会話文を多用する作家が多いように思われます。

 

以前にも数人いましたが、
1900年代は山羊座天王星と蟹座の海王星オポジションが形成され、
特に1906年と1907年はピークになり、蟹座の木星も絡んでいる年です。
デュ・モーリアはその中でもとりわけ影響を受けていて、
蟹座の木星海王星
山羊座の火星と天王星
牡羊座の金星で、Tスクエアを形成しています。

 

頂点に来るのが牡羊座の金星ですが、かなり強調されています。
彼女の書く恋愛は純愛がメインです。
主人公は利益や打算を抜いて、純粋な憧れや尊敬を持っていることが多いです。
ですが、たまにびっくりするくらい気が強い面が見えます。
たとえば『レベッカ』の序盤で、主人公を雇っている夫人への描き方。
世間的には良い人物と見なされるが、実際は世間体と醜い虚栄心の塊です。
地位の高い人物には親切にし、年下の小娘である主人公を見下しているイヤな女です。
デュ・モーリアは時に、こういう人物を徹底的に批判している話を書いています。
特に、見た目や世間体や地位や名誉という「外面」だけにとらわれている人物と、
それを賞賛する人々への批判が鋭い。
この傾向は20代の頃の初期の作品に特に強く、
見ていると胸がスカッとすることがあります。
山羊座の火星と天王星の影響も強そうです。

 

デュ・モーリアは人付き合いが苦手だったいいますが、
この配置じゃ無理もないと思います。
人付きあいそのものが嫌いなのではなく、
まったく関係ない大勢の人たちの中に入っていって、

何の中身もないお喋りをしたり、
愛想を振りまくことやおべっかを使うことが嫌いなのではと思います。
火星と天王星アスペクトはかなり緊張感が強いので。
そもそも牡牛座って親しい人たちとの付き合いはともかく、
器用に立ち回るのは苦手なイメージがあります。
ところで、デュ・モーリア両性愛者だったという説がありますが、
これだけ緊張感の強いTスクエアがあって、
何にもない普通の人だった方が驚くと思います。
ちなみに、彼女自身はやんちゃなお転婆で、男の子に生まれたかった、と回顧録に書いたそうです。

このあたりは金星と火星のハードっぽいです。


彼女のホロスコープを見ていて思いましたが、
中原中也に似ているなあ・・・、と。
ちょうど14日違いで、違うのは月と水星と、
Tスクエアの頂点が水星から金星に変わったくらいです。
面白いと思うのですが、デュ・モーリアの作品は、
「自然への回帰」、「原始的な単純と純粋への願望」と「伝統と格式」との摩擦、
がテーマになっているものが多いと後書きにありました。
伝統と格式は、世間の目や常識や良識という嘘に集約されると思いますが、
レベッカ』なんてまさにそういう感じの話です。
これらは、中原さんの詩でいうところの”思惑”に当たると思います。

 

「思惑よ、汝、暗く重き気体よ、
 我が裡より去れよかし!
 われはや単純と静けき呟きと、
 とまれ、清楚のほかを希わず。」(『山羊の歌』「羊の歌」より)

 

この”思惑”については次の詩の「憔悴」でも出てきますが、

誰かに良く思われようとか、うまく得してやろうとか、

どうやら、そういう不純な気持ちのことのようです。
何となく共通しているものがあります。
しいて違いといえば、デュ・モーリア木星海王星がタイトで、
より不思議な雰囲気が強調されているのかもしれません。
中原さんのが火星と天王星の方が強く、より社会への反抗というイメージ。
わたしは二人とも大好きなのですが、けっこう比べると似ていて面白いです。
それぞれの作品の理解にも繋がりますし。