文豪とホロスコープ

星占い&読書好きが主に古今東西の文豪のホロスコープを見ていきます。ほか、読書感想や星占い関連について、日々のつれづれなど。

文豪とホロスコープ 推理作家編その4 ドロシー・L・セイヤーズ

ドロシー・L・セイヤーズはイギリスの女流推理小説家です。

(このLを付けることになぜかこだわったそう)
同世代の作家たちと比べると知名度では若干劣りますが、
イギリス推理作家クラブ第三代会長(初代はチェスタートン。ちなみに四代目はクリスティ、1年だけですが)。
特に『ナイン・テイラーズ』は非常に高く評価されています。
代表作は『誰の死体?』『殺人は広告する』『ナイン・テイラーズ』など。

 

○『ナイン・テイラーズ』

ある雪の大晦日の夜、主人公は沼地にある小さな村へと迷い込む。
車の修理と一宿一飯の恩を返すため、年末に鳴らす鐘の綱を握ることになる主人公。
その鐘の音が、殺人を呼ぶことに……

 

この話の鍵は鐘です。
複数の鐘を組み合わせて鳴らすことで曲を演奏するという
転座鳴鐘が重要な意味を持っています。
これ以上はネタバレになるので言えません!

 

さて、この話はわかりやすい謎が出てきたり、
奇抜なトリックが使われていたり(奇抜っちゃ奇抜ですが)、
読み終わって即座にすっきりするような話ではないのですが、
読んでいるうちに、じわじわ面白くなってきます。
ああ、あそこで出てきたあれは、ああいうことだったのか・・・とか。

 

あとは、普通に小説として面白い。人間関係がわりと濃密で。
主人公のピーター・ウィムジィ卿と執事のやり取りとか、
村の富豪の娘のヒラリーの悩みとか、閉鎖的な村人の態度とか、
論理とトリック主体のクリスティとはある種、反対のタイプですね。
ちょっと複雑な鐘の豆知識(ちょいちょい出てくる転座鳴鐘とか)や、
イギリスの建築のあれこれとかが出てくるので
現代人でも平気に読めるよ!というわけではないのですが、
そこをひっくるめて雰囲気になっている物語です。

ただ、創元推理文庫で500頁近くあるのでご注意を。

 

ホロスコープ解説

ドロシー・L・セイヤーズ(1893/6/13 出生時間不明)

 

太陽は双子座、月は双子座(確定)、ASCは不明。
彼女のホロスコープは非常にシンプルです。
感受点を除くと5サインにしか星が入っていません。
エレメントも風と水にほぼ集中しています。

太陽、月、海王星冥王星が双子座です。
そして月と海王星冥王星コンジャンクション
クリスティとは違う意味で風属性がすごく強いようです。

 

双子座の強いチェスタートンは短編が得意でしたが、
セイヤーズにも同じような特徴が見られます。
伏線をずっと引っ張って最後の最後でネタばらしをするのがクリスティやエラリー・クイーンですが、
セイヤーズは一見関係のない小さな伏線とネタばらしを繰り返して、
積み上げていった最後に全部が繋がる・・・と文庫の解説(巽 昌章氏)にも書いてありました。
そのおかげで、読んでいて一向に飽きない。謎が謎を呼んでますます深まっていく。
そして、最後に見えたのは衝撃の事実・・・
どちらかといえばドラマや映画っぽいですね。
ドラマは15分ごとに見せ場があると聞いたことがあります。
ちょっとずつ短い、テンポの良い思考を繋げて話を作るというのは、
やっぱり双子らしいなあ、と思います。
また、作品のひとつに広告をテーマにしたものがあって、
(『殺人は広告する』。セイヤーズは元広告店のコピーライター)
それも言葉・情報・メディアを司る双子座らしくて興味深いですね。

 

で、もうひとつの注目点は水のエレメントです。
水星、金星、火星が蟹座。そのうち水星と金星が合で、
蠍座天王星とトラインしています。
蟹座にわりとパーソナルな星が3つも入っている。
セイヤーズの本文はけっこう重厚で、文章力があるなあ、と思います。
(会話文は双子座らしく面白くて軽妙なのですが)
鐘の専門話が乱舞したりするので、たまに難しいですが。
よそ者が来た際の村人の閉鎖的な様子や、一般的な家庭の描写が上手い、
つまりは心理描写が上手いということなんでしょうね。
そもそも保守的な村や集団の描写って蟹座は上手いですね。
ホーソンとかヘッセとかオーウェルとか。
カフカも、集団に入れないという正反対の方向性で。

そういえば、カフカセイヤーズホロスコープは共通点が多いですね。
『ナイン・テイラーズ』でも集団に入りきれない女の子が出てきます。
保守的、伝統的な村の暮らしに順応しようとしつつ、頭が良すぎるために順応しきれないという。
集団に溶け込みたい蟹座と、溶け込みきれない双子座、
その二つが同居する苦しみみたいなのがなんとなく伝わってきます。
(双子座は風星座なので距離を取ろうとする。
対象を理解・把握するには距離を取る必要があるから、
蟹座のようにある種自分の思考を放棄して集団と一体になることは不可能・・・というイメージで)

 

ちなみに、セイヤーズはダンテの『神曲』の翻訳をしたり、
宗教関係の劇や随筆を書いたりという活動もしています。
推理作家にしてはけっこう珍しいタイプだと思います。
そういえば、ダンテって双子座って噂ですね(『神曲』内で明言している)。