文豪とホロスコープ

星占い&読書好きが主に古今東西の文豪のホロスコープを見ていきます。ほか、読書感想や星占い関連について、日々のつれづれなど。

文豪とホロスコープ 推理作家編その8 ディクスン・カー

ジョン・ディクスン・カーアメリカの推理小説家です。
密室を初めとする不可能犯罪が大好きで、
「密室派の総帥」の異名を持ちます。この呼び方、超格好良い。
代表作は『皇帝のかぎ煙草入れ』『帽子収集狂事件』『火刑法廷』など。
また、別ペンネームのカーター・ディクスンでも多数の作品があります。

こちらでは『ユダの窓』など。

 

○『皇帝のかぎ煙草入れ』

前の夫と離婚した可憐な女性、イヴ。
すぐに新しい出会いがあり、新しい婚約者と幸せを掴むかと思われた。
だがある夜、婚約者の父親が何者かに殺害されてしまう。
その容疑がかかったのはイヴで……


この作品のトリックはクリスティが絶賛したとして知られています(諸説ありますが)。
まさかの方法で騙されます。
カーと言えば密室、密室といえばカー。
とにかくトリックの種類が豊富で飽きない。
まさか、そんな手段で……というのがいくつも出てきて面白い。
カーは射手座ですが、
射手座好みの作品だなあ、と思います。


奇抜なトリックもさることながら、カーは文章が上手くて、
普通の読み物としても面白い。
純文学系ではなくて大衆小説系です。
漫画の最後の頁に気になるコマを置いて、
次頁の冒頭で明かす、みたいなやり方が上手い。
ついつい読んでしまう。
それに、結構わかりやすく本文中にヒントを置いているんですよね。
しかし、なぜか見逃してしまう。
最後に「やられた!」と叫ぶことがしばしば。
ちょっとだけアイリッシュ(『幻の女』)に似ているところがありますね。
反面、エラリー・クイーン(カーより一つ上)に比べると、
論理が強引だったりするところもあるようですが。

 

しかし、カーといえば
アメリカ人なのにイギリスやフランスの話ばかり書いていたり、
(そのせいかイギリス人と思われたり、辞書にはイギリスに帰化とある)
半分以上誰も知らないようなネタを詰め込んだ歴史小説だったり、
主人公のひとりのメリヴェール卿の口が超悪かったり(面白いんですが)、
けっこう変わった、面白い人だったようです。
『三つの棺』という有名な作品には密室講義という章があって、
なんと、主人公が「この作品はフィクションなんだけど」という、
メタ発言までし始める。なかなかこの時代じゃ見られない。
フリーダムすぎるカーさん。

 

わたしも推理小説家の中では、カーは屈指で好きです。
特に『ユダの窓』のトリックはかなりびっくりしました。
それ以来○○○○には気を付けるようになったりして……
まさか、あんな方法で……詳しくは言えませんが。

 

前述した『皇帝のかぎ煙草入れ』『ユダの窓』『髑髏城』、
未読ですが『爬虫類館の殺人』『白い僧院の殺人』
怪奇小説じみた『火刑法廷』も有名ですね。(カーター・ディクスン含む)
しかし、80個以上の作品があるのでとても読み切れない。
あと、カーはタイトルが面白い。
『悪魔のひじの家』とか。どんな家だろう……
他、例えば前述した『爬虫類館の殺人』の原題は
『He Wouldn't Kill Patience(彼が蛇を殺すはずはない)』。
タイトルから興味を引かれるものも多いです。
しかも、内容にぴったりと沿う。
どんな話だろう、と想像力を掻き立てられるものばかりなので、
タイトルリスト見ているだけでワクワクします。

 

ホロスコープ解説

ジョン・ディクスン・カー(1906/11/30 出生時間不明)

太陽は射手座、月は牡牛座か双子座、ASCは不明。

ホロを見ていただければ一発でわかりますが、
太陽、水星、金星がきっちりコンジャンクション(笑)
まさにキングオブ射手。
もう、自分の好きなことしかしない人ですね。
面白いトリックが好き、じゃあトリック考えよう。
歴史小説が好き、じゃあ歴史小説にしよう。
怪奇小説が好き、じゃあ怪奇小説にしよう(カーはポーの大ファンだったとか)。
アメリカよりイギリスが好き、じゃあイギリスに行こう。
やりたいからやった。面白いと思ったから書いた。
なんとまあ、すごくわかりやすい。
完全にカーの趣味が入っているとしか思えない作品も多いらしいですからね。
「俺はこれが好きなんだー!」って聞こえてきそう。
なんというか、すごく射手座らしい。
海外好きですしね。イギリスだけじゃなくてフランスも好き。

 

そういえば、
『ユダの窓』の文庫版に座談会が載っていたのですが、
その中でカーはトウェインに似ているとありました。共通点が多いと。
カーとトウェインは同じ11/30生まれで射手座なんですよねー。
ヨーロッパ大陸に何度も渡航しているし、懐古趣味もあるし。
両者とも歴史小説好きだし。
うーん、興味深い。

 

しかし、推理小説家としては珍しく、風のエレメントが少ない。
天秤座の火星くらい(何故かポーと同じ位置だったりしますが)。
だからこそトリック重視だったのかな?とも思います。
そういうところは火が乏しかったエラリー・クイーンと対照的です。
エラリー・クイーンが一部の隙のない完璧な作品だとすると、
ディクスン・カーは奇抜なトリックによる一点突破形ですね。
不可能状況を打破するトリックへと、ぐいぐい進んでいく。
どうやってあの状況をひっくり返すんだ? と思って、ついつい読んでしまう。
やっぱりわかりやすくて単純に面白い。
けど、結構そこに至るまでの過程が強引(笑)
あ、でも月は双子座かな、と思います。
文章が軽くて読みやすいので。

そういえば、この世代、天王星海王星オポジションですが、
この年(1906年)生まれは海王星木星も被っている(多少ヤバい)年代。
なんとなく、カーはデュ・モーリアに近い雰囲気がありますね。
サスペンスというか、張り詰めた緊張感というか。
怪奇好きはここ由来かなあ、とも思います。

 

エラリー・クイーンほど正統派じゃないのですが、
カーは面白いです。
推理するよりも、面白がるつもりで読んでみてください。
たまに、誰が喜ぶんだこれ? というところが出てきますが、
きっと作者は楽しんで書いた部分なのだと思います。