文豪とホロスコープ

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文豪とホロスコープ 推理小説家編その10 アントニイ・バークリー

アントニイ・バークリーはイギリスの推理小説家です。

正式にはアントニイ・バークリー・コックスで、
イニシャルを繋げるとABCになるそうです。
(だいたい、アントニイ・バークリーで紹介されていますが)
「名」探偵、ロジャー・シェリンガムを主人公にしたシリーズが有名ですが、
他にもフランシス・アイルズという名前や

「?」という声に出して読みにくい(というか読めない)ものもあったとか。
代表作は『毒入りチョコレート事件』『ジャンピング・ジェニイ』

『第二の銃声』など。

 

○『ジャンピング・ジェニイ』

ある作家の主催で開かれた「殺人者と犠牲者」パーティ。
その余興として用意された絞首台と三つの首吊り人形。
その一つがパーティの終わりに、本物の死体にすり替わっていて…


アントニイ・バークリーは革新的な作風で知られる作家です。
この『ジャンピング・ジェニイ』でも変わらず。
どう革新的かは詳しく言えないのですが、
「名」探偵のロジャーが色々やらかします。
なぜ「名」かは読めばわかります(笑)
絞首台とか首吊り人形とかぱっと見怖そうですが、
わりと内容はライトでギャグっぽい。
100頁くらいまで読むと、がらりと印象が変わります。
リアルに「ええ?」って言いました。
声に出して言いました。

 

しかし、この探偵役のロジャーがどうしようもない人で、
「単純明快な事件をわざわざ複雑怪奇にする」
とライバルの警部に呆れられる探偵。
その思考は推理というより奇想天外な想像、たまに妄想はまさに迷探偵。
バークリーはホームズなどの典型的な格好いい探偵像を嫌って、
かけ離れた人物を作り上げたそうです。
確かに澄まし顔した名探偵より好感度は持てますが、
ツッコミ所が多すぎる(笑)

 

この『ジャンピング・ジェニイ』はバークリー入門書としてオススメらしいですが、
バークリーで一番有名なのが『チョコレート殺人事件』です。
(まだ読んだことはないのですが)
これは複数の探偵が見た同じ事件を別々に推理する、
「多重推理」を扱った最初のものだとか。

とある推理小説に書いてあったのですが、この多重推理構造は
芥川龍之介の『藪の中』と似ているそうです。
確かにバークリーと芥川龍之介はホロに類似点があります。
それは後ほど。

 

ホロスコープ解説

アントニイ・バークリー・コックス(1893/7/5 出生時間不明)

太陽は蟹座、月は魚座(確定)、ASCは不明。

バークリーで一番目立つのは獅子座です。
水星・金星・火星がコンジャンクションしていて、
ここに天秤座の土星と双子座の海王星冥王星セクスタイル
小三角を作っています。
6星も巻き込んだ小三角ってなかなかいませんよ。
さらに、獅子座に蠍座天王星がスクエア。
バークリーのよく言うと革新性、悪く言うとひねくれ性は
ここが由来だろうなあ、と予想が付きます。
本当に面白い、言ってしまえば大衆にウケがいい作品を書くのは
獅子座は得意ですね。
似たような人では大デュマや谷崎潤一郎あたりが思い浮かびます。
犯人解決の展開がかなり急(同期のセイヤーズには「ロジャー・シェリンガム式」と言われた)で、
手がかりなしに真犯人が示されることもあります。
S・S・ヴァン・ダインが憤慨しそうです。
フェアかアンフェアで言えばアンフェアなんだろうけど、
面白ければ全て良し、と言っているようです。
そういうやや強引なところも獅子座の魅力、と取れなくもない。
人柄的には、かなりゴーイングマイウエイな人だったんじゃないかなあ、と思います。

 

さて、バークリーは推理作家には珍しく、
ライツが蟹座魚座と水属性強め作家です。
さらに太陽と蠍座天王星がトライン。
出生時間によっては月も含めてグランドトラインになります。
前述しましたが、バークリーと芥川龍之介の共通点とは、
水属性、特に魚座が強いところと双子座の海王星冥王星の合です。
(ちなみに、両者は一才違い)
芥川龍之介魚座の太陽・水星と双子座の海王星冥王星がきっちりスクエア。
バークリーはスクエアこそしていないものの、魚座の月で海王星冥王星コンジャンクションあり。
二人に共通するのは、ひとつの現実から無数の想像・虚構が生まれてくることです。
魚座は境界や結論を曖昧にする性質がありますし、
双子座は思考をもてあそびすぎてひとつの答えを出すことが苦手な面があるように思います。
人間の認識とはひどく曖昧なもので、
ひとつの現実から引き出せる「真実」はひとつではなく、
人の数だけ、認識の数だけ、無数の「真実」が生まれてくる。
そのため、本当の真実とはごく曖昧なものである・・・と述べているのかなあ、と思います。
芥川龍之介が病んだ原因もこの辺りにあるような気がしますが)
ひとつの出来事から自分に都合のよい真実を述べる『藪の中』の当事者達と、
ひとつの事件から妄想すれすれの無数の仮説を繰り広げるロジャー・シェリンガムと、
なんか似ているなあ、と思うのです。
しかも、悲しいことに彼らは絶対に真実には辿り着けない。

バークリーは稀代の皮肉屋と言われますが、
真実に辿り着けない「名」探偵の活躍を、ぜひご覧いただければ、と思います。