文豪とホロスコープ

星占い&読書好きが主に古今東西の文豪のホロスコープを見ていきます。ほか、読書感想や星占い関連について、日々のつれづれなど。

文豪とホロスコープ ドイツ作家編その2 リルケ

ライナー・マリーア・リルケはドイツの作家です。

ライネル・マリア・リルケとも。
詩人として有名ですが『マルテの手記』など小説や戯曲を書いたり、
彫刻家のロダンと親しく、彼の評論も書くことがあったとか。
むしろ、日本では最初に戯曲が紹介されたらしいです。
代表作は『形象詩集』『時祷詩集』など。

 

○人となり
リルケは自伝的作品でも語っているように、
古くからの伝統を持つ家系の出身で、父親は軍人でした。
ただし、強い影響を受けたのは母親の方でした。
この母親がかなり変わった人だったらしく、
女の子が欲しかったために、
男の子のリルケを五歳まで女の子として育てる
という奇抜なことをしています。
この両親はリルケが9歳の時に離婚して母親から離れて育ちますが、
実際にリルケには女の子っぽいところがあったらしく、
軍人の父親より母親に親しみを覚えていたようで、
少女の歌や聖母マリアへの呼びかけの詩など、乙女チックな点が見られます。

リルケの詩は時代ごとに変遷を遂げていて、
最初は恋人に送った叙情詩、恋愛詩を多く書いていました。
ロシア旅行やロダンとの出会いを経て、
「個々の事物を注視して其内に隠れている深い心を引出し」(茅野蕭々『リルケ詩抄』より)
という『形象詩』の境地にまで達し、汎神論に至った……らしいです。
正直、わたしにもよくわかっていません。
ぱっと読んで思ったのは、実に抽象的かつ乙女チックだなあ、ということでした。
先に言ってしまうと、リルケは射手太陽・水瓶座月なので、
かなーり抽象的かつ精神的です。
わたしは海外の詩人でいえばボードレールの方が好きなので、リルケはぴんと来なかったですねえ…

ちなみに、リルケが日本に初めて紹介されたのは1927年。
堀辰雄立原道造がけっこう影響を受けたらしいです。
うん、なんかわかる。乙女座男子系。
乙女チックなところがよく似ている気がする。


ホロスコープ解説
ライナー・マリーア・リルケ(1875/12/3 23:50)

 

永井荷風と同じ誕生日。
リルケの誕生日はぎりぎり3日ですが、たまに4日と書かれている本も見ました。

射手座の太陽、水瓶座の月、ASCは乙女座。
リルケにはたしかに射手座っぽいところがあります。
妙に抽象的なものだったり、理想主義的なところがあったり。
射手座の作家は現実から距離を取る傾向があって、
現実を離れて美しい過去や冒険のための別世界を描くことが多いです。
トム・ソーヤーの冒険』や『不思議の国のアリス』が典型例。
リルケの詩も、現実から離れている感じがしますね。
よく言えばロマンチックかつドラマチック、
悪く言うと地に足が着いていない。
そういえば、リルケは旅行が好きだったようで、
イタリアやロシア旅行に行ったり、パリに住んだりして、
それぞれ詩や小説の題材にしています。
他のドイツ詩人といえばシラーやハイネが浮かびますが、
ハイネも旅行が好きだったなあ、と思い出します。
ちなみに、ハイネも射手座ですね。
ドイツは哲学的なことを好む国民性のせいか、
射手座の詩人が強いんでしょうかね。


リルケの月は水瓶座にて、
火星・土星コンジャンクションです。
この組み合わせ、かなりえげつないですねー。
散々リルケは乙女チックと書きましたが、
月(女性性)が火星と土星によって傷つけられているので、容赦ない言い方すると、
乙女っていうより、去勢された男って言った方が近いかもしれません。
言い方はアレですが、
男性特有の理知はあるけれど、ギラギラしていないというか、妙に男っぽくないというか、
そういう感じがするような気がします。乙女座男子が引き付けられるわけです。
水瓶座そのものがかなり中性的な印象があるので、そのせいでしょうか。
(ちなみに、同じく火星と土星と月がアスペクトしているのはアンドレ・ジッド。こちらは火星・土星と月がオポ。
ジッドは同性愛に走りましたが、リルケはそういう話は聞いたことがないです。
サインの違いのせいかな? 興味深い)

本当は、リルケについて詳しく知らないので
紹介せずにスルーしようかと思ったんですが、
ホロスコープを見て気を変えました。
作成していただければわかりますが、不動宮のグランドクロスです。
Tスクエアやグランドトラインならともかく、クロスは滅多にいないです。
参加しているのは水瓶座の月・火星・土星に加えて、
牡牛座の冥王星、獅子座の天王星蠍座木星
と、他は大惑星ばかりです。なんかすごいです。
ということは、水瓶座の星に力が集中しているようですね。
実際、水瓶座がかなりいい仕事しているようで、
リルケの詩は叙情ではなく、客観で作られています。
こう、色々と星の影響が流れ込んだものを客観的に捉えることで、
そのもの自体の本質を引き出した云々という詩が書けたのではないかと思います。
自分でもよくわかっていませんが、リルケの詩は水瓶っぽいです。
でも根っこは射手座っぽくもあります。どちらにせよ、現実に存在していない感じ。
とりあえず、このグランドクロスを見た限り、
時代を代表する大詩人ってことは間違いないようですね。

文豪とホロスコープ ドイツ作家編その1 ゲーテ

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテはドイツの作家です。
シェイクスピア、ダンテと並んで世界三大文豪と呼ばれ、
ドイツで最大の文豪と言われています。
代表作は『若きウェルテルの悩み』『ファウスト』など。
主に小説や戯曲で知られていますが、詩もよく書いています。

 

○人となり
裕福な家に生まれ、大学に通ううちに文学に目覚めていくという、
典型的な文学青年でした。

若い頃のゲーテシュトゥルム・ウント・ドラング(疾風怒濤)運動という、
まあドイツの文学ルネッサンスみたいな、
新しい文学を作ろうとする若手のひとりでした。
人妻への恋愛と友人の自殺に影響されて書いた
『若きウェルテルの悩み』は当時の若者に大流行した本でした。
大流行というと病気みたいですが、
実際に『ウェルテル』を読んでピストル自殺をする若者がヨーロッパ中にいたとか。

大文豪として名を知られた他、自然科学や音楽にも興味を持ち、
色彩学、地質学、植物学など幅広く著作を遺しているようです。
また、小国ですが宮廷に招かれて宰相になったことも有名な話。
文豪の中で一番出世したのはこの人だろうなあ、と思います。
82才と長生きし、最後の言葉は「もっと光を!」だったそうです。

ゲーテは色々名言を残していて、
特にエッカーマンという人が書いた『ゲーテとの対話(上中下)』に詳しいです。
その中に見えるゲーテはかなり冗談好きな明るい人だったようです。
興味ある方はぜひどうぞ。

 

ホロスコープ解説
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749/8/28 12:30)

 

乙女座の太陽、魚座の月、ASCは蠍座

ゲーテホロスコープは大半が地と水のエレメントで出来ています。
特に水が強くて、月とASCの他にも
蟹座の海王星蠍座冥王星魚座木星でグランドトラインです。
ゲーテは文豪として知られていますが、
実は小説よりも戯曲や詩の方が得意だったようです。
ゲーテの詩といえば、
シューベルトが曲を付けた「魔王」や「のばら」など。
水、特に魚座が強い人は詩が好きな傾向があるようです。
詩の中でもロマン主義的なものです。
ぱっと浮かぶ魚座系の詩人というと、一九世紀ロマン主義の代表ユゴー
日本では島崎藤村とか国木田独歩とか。
国木田さんなんてゲーテと同じく太陽乙女・月魚で、
あれは自然主義じゃなくてロマン主義だったんだなあ、と思いました。
魚座芥川龍之介国木田独歩のことを褒めていたような、と思い出したりする)
魚座はもともとロマンチックでファンタジックなものが好きですから、
その影響かもしれません。

水に負けていないのが地属性。
乙女座の太陽と山羊座の火星がトラインしています。
これが結構強いようで、ゲーテの発言にはちょこちょこ地属性っぽいものが見えます。
前述したエッカーマンによると、ゲーテ
「経験を積むとなると、先立つものは金だよ。私がとばす洒落の一つ一つにも、財布一ぱいの金貨がかかっているのだ」
「なにもかも独学で覚えたということは、ほめるべきこととはいえず、むしろ批難すべきことなのだ」
「趣味というものは、中級品ではなく、最も優秀なものに接することによってのみつくられる」
と言っていたとか。
お金や経験に言及しているあたり、ちょいちょい乙女や山羊っぽいところが見えますね。

自然科学に夢中になったのは乙女の影響だとしても、
政治家になっている辺りは山羊座っぽい。
そういえば、ゲーテも若い頃はロマン主義な傾向が強かったようですが、
晩年はロマン主義批判に回り、
ファウスト』に見られるようにギリシャ古典へ回帰する傾向が強くなったようです。
山羊座って古典への憧れというか、伝統を大事にする傾向が強くて、
分かりやすい例でいうと、尾崎紅葉
明治の文明開化・西洋最高って時に、日本伝統の粋を書きまくった人ですね。
他、一時期王朝文学にはまっていた堀辰雄三島由紀夫は言うまでもない。
意外なところだと与謝野晶子とか北原白秋とか。
わたしは金星山羊座なので、
山羊座の傾向がある作家は結構好きなんですけどね。
ちなみに名前を挙げているのが日本作家ばかりなのは理由があって、
やっぱり海外作家より日本作家の方が古典かどうかわかりやすいんですよね……
海外作家で古典っぽい傾向があるよ、とわかる方がいれば、
ぜひ教えていただきたいです。海外で古典っぽい人。

ドイツ作家について

ホロスコープ海外編もアメリカ、フランス、イギリス、ロシアと来てドイツですが、

ドイツでひとまず終わりにしたいと思います。

次は何しようかな…推理小説作家編とか面白いんじゃないかと考えていますが。

 

さて、ドイツの文学ですが、

そもそもドイツという国が成立したのは19世紀末、1871年のことでした。

実は日本の文明開化よりも遅い。

それまでは神聖ローマ帝国というゆるい国同士の繋がりがあっただけでした。

 

とはいえ、ドイツの文学は宮廷で騎士物語などを披露した

吟遊詩人(ミンネジンガー)や、

中世の職人詩人(マイスタージンガーニュルンベルクとか有名)など、

かなり歴史が古いものです。

その影響があるのか、とくに初期のドイツ文学は民話や詩の影響が強く、

代表的な作家には『青い花』のノヴァーリスや、

ポーに影響を与えたE・T・A・ホフマンや、

人魚姫の元ネタっぽい『オンディーヌ』のフケーなどがいます。

 

ドイツの代表作家といえばゲーテです。

ちょうどゲーテの時代に疾風怒濤運動(シュトルム・ウント・ドラング)という運動が起こり、

中心にいた作家がゲーテと友人の詩人であるシラーです。

これがきっかけでドイツという国民性がまとまり始めた、

という文学的にも政治的にも意義の深い運動だったようです。

文学で国ってまとまるもんなんですね。

時期的にも日本の文明開化みたいなもんでしょうか。

ということは、ゲーテは日本でいうところの夏目漱石

 

20世紀はドイツにとって受難の時代になります。

第一次世界大戦ナチスの台頭、第二次世界大戦と立て続けに戦争が起こり、連合国の分割統治によってベルリンの壁が作られ、西と東に分裂させられていまします。

戦争には反戦を示したり、ナチスによって迫害され、亡命した作家も大勢います。

反戦ではヘルマン・ヘッセ(『車輪の下』)、亡命した作家にはレマルク(『西部戦線異状なし』『凱旋門』)やケストナーなどがいます。

やはり、第二次世界大戦はドイツの作家には強い影響を与えたようです。

戦後にはノーベル賞受賞作家のグラスや、日本でも人気の高いミヒャエル・エンデがいます。

 

ドイツ文学はロシア同様、そこまで詳しくないので、今回は四人だけ紹介します。

ドイツ文学は読んでいるとドイツだなーって感じがします。

なんというか、すごくマジメ。

だけど合間からすごく下らないユーモアが飛び出すこともあるという。

国としては山羊座っぽいイメージがあって好きなんですけどね、ドイツ。

 

文豪とホロスコープ ロシア作家編その2 トルストイ

レフ・ニコラエヴィチ・トルストイはロシアの作家です。
ドストエフスキーと並ぶ大文豪で、
ロシア国内では、彼こそ最高の作家であるという評価も与えられています。
代表作は『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』『復活』など。

 

・人となり
トルストイはロシアの由緒ある伯爵家に生まれました。
ドスとは違って裕福な大貴族です。
ちなみに、親戚(確か甥っ子)もA・トルストイという作家がいます。

裕福で苦労することなく育ったトルストイですが、
相続した農地で農民の生活改善を目指したり、
自分の土地の農奴(領主の持ち物とされる農民)を解放しようとしたり、
農民のための学校を建てたり、
理想主義が多分に混じっているこの改革は上手くいったり行かなかったりですが、
いろいろと取り組んだことは事実です。

トルストイは作品以外に思想面でも強い影響力を持っています。
非暴力・平和主義や自分の財産をなげうっての社会事業、
晩年には独自のユートピア的な思想を広めるため、
もっぱら社会思想家として活動していたそうです。
これはトルストイ運動と呼ばれているそう。
この思想、かなーり理想的なものなのですが……
大文豪が最後に行き着いた答えとしては興味深いので解説で詳しく触れます。

私生活では9男3女(!)という大家族に恵まれ、
孫も生まれましたが、だんだんと自分の人生に悩み始めます。
また、裕福な大貴族であり、召使いに囲まれての生活に疑問を持ち、
1910年、82才の時に家出します。
その途中で体調を崩し、小さな駅で肺炎にて亡くなりました。

作品面・思想面の影響力は大きく、ロシア国内から世界中にまで見られます。
日本は明治時代に大いにロシア文学の影響を受けたのですが、
白樺派武者小路実篤有島武郎あたりはかなり強い影響が見られます。
とりわけ影響を受けた武者さんはトルストイに倣い、
「美しい村」という村人同士の相互援助で生活する農場を作っています。
日本版トルストイって感じです。
あとは宮沢賢治もかなり似ています。
農民のためにあれこれ取り組みをするとか、
自分の裕福な家柄が申し訳なくなって農民と同じような生活をするとか。

宮沢賢治でも思いましたが、
どうしてこう、この人たちはお人好しなのか。
人間、生まれたからには自分の目的を達成するために最大限動くべきという、
自分第一主義者の私(射手座)から見ると苦々しくて仕方がない。
お人好しと言ってしまえばそれまでですが、
やはり自分をなげうって皆のために尽すという行為には、
これだけ多くの人を共感させるような、一種の美しさがあるんでしょうね。

 

ホロスコープ解説
レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ(1828/9/9 22:52)

乙女座の太陽、乙女座の月、ASCは蟹座。
はい出ました、乙女座。武者さんやみやけんが影響受けている時点でなんとなく予想はしていましたが。
めちゃくちゃ乙女強いです、この人。
太陽、月、水星が合。
さすがの大作家、さすがの影響力という感じです。
自分の考えや思想を上手く書き表す才能があったんでしょう。
農民のために尽すとか、私財をなげうつとか、非暴力・平和主義など
地属性・奉仕・暴力反対の乙女座っぽいキーワードが頻出しています。
この人がやった事業の中では、
農民のために学校を建てるというのが興味深いです。
これから農民がひとりの人間として生きていくにあたって、
学があること、ものを識別する能力が大事だと考えたわけです。
こういうところも実に乙女座っぽいです。

そして、この乙女座のステリウムに、
山羊座の火星と海王星の合がトラインしています。
少し離れた山羊座天王星も含めて、
地属性に6星入っていることになります。
まさに、理想のために邁進する、って感じですね。
実際に社会を変えるためにあれこれ活動している方なので、
山羊座の火星が良い仕事をしているのかもしれません。
その活動が理想の社会を作るため、
また、思想や宗教面での活動に出る辺りが、
山羊座の火星と海王星の合だな~って感じです。
しかし、火星と海王星アスペクトが強い人は、
結構わがままだったり、理想が高すぎて苦悩したり、
海王星の影響か酒その他に溺れる傾向が強いと思っているのですが、
トルストイは乙女座のステリウムに上手く流れたから大丈夫だったのかもしれません。
結局、苦悩は深かったようですが。

作家としてのトルストイの顔もホロに出ています。
トルストイ写実主義の作家として知られています。
現実社会をありのままに描くというアレです。
代表的な例は『戦争と平和』。
制作足かけ5年、登場人物は500人超、
日本版だと分厚い文庫で4冊以上という大長編です。
これは写実主義の傑作で、
サマセット・モームが「世界の十大傑作」のひとつに挙げているそうです。
長すぎてわたしはとても読む気になれませんが……
同じく地属性が多い作家のバルザック同様、
トルストイといえばやたらと長いイメージがあります。
作品内ではトルストイの思想や経験と思しき場面が多々登場します。
ここは太陽・月・水星が発揮されている感じがします。
太陽や月と水星が合している作家は、
作品を自分の言葉や思想を伝えるツールとして書いている面が強いなあと思います。
しかし、地属性ばっかり入っているせいか、
作品の展開が遅々として進まないことがままあります。
火属性や風属性が強い人にとっては読みにくく感じるかもしれませんが、
「これが地属性の典型か~」と思って読んでみると、
何か新しい発見があるかもしれません。

 

ロシア文豪について

さて、ロシアの文豪ですが、
私はロシア作家はぜんっぜん読んでいません。
ドストエフスキートルストイくらい。


もちろん、ロシアにも優れた作家はたくさんいます。
プーシキンとかツルゲーネフとかは日本の明治期に大いに影響を与えました。
他にも『桜の園』や『三人姉妹』などの現代戯曲を書いたチェーホフや、
ロシアのどん底をありのままに書いたゴーリキー
度重なる戦争や社会主義からソビエトの時代に入ってからは、
ザミャーチンパステルナーク、ソルジェニーツィンなど。
しかし、ロシアが最先端だった明治ならともかく
現代日本だとどうしても知名度が下がりますねー。


他の作家もおいおい読んでいきますので(プーシキンとかレールモントフとかガルシンとか面白そう)、
まずはドストエフスキートルストイについてやっていきます。

文豪とホロスコープ ロシア作家編その1 ドストエフスキー

フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキーはロシアの作家です。
文豪、と聞けばドストエフスキーと答えが返ってくるくらいの超有名作家です。
罪と罰』『白痴』『悪霊』『カラマーゾフの兄弟』の四大長編の他、

地下室の手記』『死の家の記録』などのこゆい作品が長編短編含めて多数あります。

 

・人となり
ドス(※名前が長いので以下ドストエフスキーのことをこのように称す)の人となりを書くに当たって、
去年の神田古本市で買った太田直子著『ひらけ!ドスワールド』(2013、ACBooks)を参考にしました。
全編通してドス愛に溢れ、普通に読んでも面白い本です。
この本に倣い、私もドスと呼ばせていただきます。

ドスは1821年にロシアの下級貴族として生まれました。
貴族といってもそんな裕福ではなく、父親は医者として働いていました。
ちなみに、1821年といえばフロベールボードレールと同い年です。

子供時代は読書三昧で多少根暗だった(らしい)ドスは
兄と一緒に寄宿学校に入りますが、十代後半くらいのこと、
父親が領地の農奴に殺されるという事件が起こります。
これがドスの人生に大きな影響を与えた、と伝記などでは書かれているらしいです。
まあ影響ないわきゃないわなと思いますけど。

ともかく、学校を卒業して役所に勤めますが、一年で辞めて文筆に集中します。
そして書かれたのがデビュー作の『貧しき人々』。
これが話題になり、ドスは新進気鋭の新人として文壇に迎え入れられます。
しかし、その後は鳴かず飛ばず
そうこうしているうちに、参加していた社会主義系のサークル関係で逮捕され、
政治犯として銃殺刑の宣告を受けます。
このあたりはすごいです。
銃殺刑の宣告を受けた作家なんて世界に何人もいないでしょう。
まあ見せしめの意味が強かったらしいので、
銃殺刑を受けるほんの数分前に皇帝から恩赦が下り、シベリア流刑になります。
この頃のことは非常に衝撃的だったらしく、『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』、
他多数の作品で影響を見ることができます。
シベリアで服役し、数年経てモスクワに帰ってきて、
やっと新生ドスが誕生したわけです。

ドスといえば世界級の大文豪ですが、
実際の人となりはかなりのうっかりさんで困った人でした。
すごかったのが賭博癖と借金癖です。というか、賭博癖からの借金がひどかった。
最初の方の奥さんと不仲だったドスは別の恋人を作ってヨーロッパへと旅行に行くのですが、
ストレスのせいか、賭博に異様にのめりこんでしまった。しかも弱い。
どれくらいすごいかというと、
同じ作家仲間のツルゲーネフに借金を何度もしてついに絶縁された、
借金が払えずに同行した恋人の足下に土下座した、
などというエピソードがあります。

ちなみに、編集者から原稿料を前借りして、
「あと一ヶ月で書けなければ向こう数年間タダ働き」
という状況に追い込まれたこともありました。
この窮地にドスは口述筆記という裏技を使い、
一ヶ月で本当に作品を一本仕上げてピンチを脱しました。
もうどこからツッコんでいいのやら。
そして、この時書かれた話のタイトルが『賭博者』(笑)
もう笑うしかないじゃないですか。しかもこれで結構面白い話なのだから。
大文豪の威厳ゼロです。
結局、文豪だろうが何だろうが、ただの人間ってことですな。

にしても、〆切間近に口述筆記でかっ飛ばして書く、
って、どこかの誰かさんもやっていましたが、
いつの時代のどこの国にもこういう人がひとりはいるもんですねえ。

 

ホロスコープ解説

フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(1821/11/11 9:47)

蠍座の太陽、双子座の月、ASCは射手座。
蠍座なのはすっっっごいよく分かる。
ドスの『罪と罰』は読んだことがあるのですが、
ラスコーリニコフ青年の内面の心理が事細かに書かれています。
事細かすぎて、すっっっごく読むのに疲れます。
テンポは速めなので読みやすいのですが、いちいち感情移入していると非常に忙しない。
なので私はドスが結構苦手の部類なのですが・・・
この読みやすさは双子の月由来でしょうね。
双子座の太陽、月問わずですが、文章が読みやすい人が多い。
ドスも重苦しいイメージがありますが、意外と文章は軽やか。
カラマーゾフの兄弟』なんかは会話文がとても多い。
しかし意外なのが、射手座が強いところ。
ASCの他に水星も射手座です。
射手座の水星ってあんまり居心地が良くないと言われているので、
ほんと、結構意外でした。
蠍座太陽で射手座に水星が入っている人を見てみると、
泉鏡花、ミッチェル(月も同じ)、カミュあたりです。
なんとなーく傾向が見えてくる気がします。
けっして文章がすごく上手いとか読みやすいわけではないけれど、
人の心の奥底や心理をえぐるのが上手いって感じですかね。

さて、ドスが生まれたのは1821年です。
前も書きましたが、この年は約170年に一度の天王星海王星の合がピークの年でした。
この合に特に強い影響を受けたのがボードレールとドスです。
ドスの場合、山羊座の0度で金星、天王星海王星が合で、
そこに魚座冥王星がスクエアで横やりを入れてきます。
ドスのテーマは色々と小難しいこと言われていますが、
私としては「人(=政治)と神(=宗教)」だと思っています。
この神という概念が日本人としては理解しにくいと言われていますが、
キリスト教の神というより、良心とか善とか「何か偉大な存在」っぽくって、
むしろ、日本人の概念に近いんじゃないかなあ、とも思います。
まだ『罪と罰』しか読んでないので理解しきれていませんが…

しかしボードレールは酒とクスリと借金で苦しみましたが、
ドスは賭博と借金で苦しみました。
どうやら天王星海王星が絡むと、何かしら厄介な人になるようです。
金星と冥王星のスクエアもヤバい感じです。
日本の誇る借金王・石川啄木も金星と冥王星のきっついスクエアがあったなあ・・・

 

いろいろ書いてとても長くなりましたが、
ドスは言われているほど偉大な人間や孤高の天才ではなく(変人ではあるけど)
流刑になったり借金まみれだったり賭博にハマっちゃうような意外と人間くさくて親しみやすい人なので、
読んでみたら、意外とドスにハマっちゃうかもしれません。

文豪とホロスコープ イギリス作家編その13 デュ・モーリア

ダフネ・デュ・モーリアはイギリスの女性作家です。
知名度はあまり高くはないと思いますが、
ヒッチコック監督などの映画の原作として有名です。
代表作は『レベッカ』『鳥』『今見てはいけない』(映画では『赤い影』)など。

 

・人となり
フランス系の芸術家一族に生まれ、
小さい頃から小説を読みふけっていたそうです。
モーパッサンやオースティン、スティーブンソンが好きだったとか。
結婚し、子供も三人生まれますが、
正直、夫や子供とはあまり上手く行ってなかったらしい。
彼女は華やかな社交生活を嫌い、有名になればなるほど、
人を避けて隠遁生活の中で執筆を続けていたそうです。

 

わたしは彼女の作品が大好きなのですが(だからこそ入れたという)、
作品を総じて、不思議な雰囲気があります。
常にぼんやりとした霧が掛かって、緊張感が漂っている感じ。
一般的には恋愛小説作家とされていますが、
謎や不気味さがあり、スリルやサスペンスの要素が十分です。
なかなかつかみ所のないところも魅力です。

 

ちなみに名前の表記ですが、最近では
「ダフニ・デュ・モーリエ」
とも書かれるそうです。こちらの方が元の音に近いのだとか。
しかし、わたしは元の方が好きなのでこちらで書きます。格好いいから。

 

ホロスコープ解説

ダフネ・デュ・モーリア(1907/5/13 16:00)

牡牛座の太陽、双子座の月、ASCは天秤座。
デュ・モーリアは「ストーリーテラーの名手」と言われていますが、
これは双子座の月の影響でしょうね。
他に双子座の月といえば
ドストエフスキーサッカリー、ミッチェルなど。

特に、後の二人とは何となく似ているような感じがします。
親しみがあって特に話し言葉や会話文を多用する作家が多いように思われます。

 

以前にも数人いましたが、
1900年代は山羊座天王星と蟹座の海王星オポジションが形成され、
特に1906年と1907年はピークになり、蟹座の木星も絡んでいる年です。
デュ・モーリアはその中でもとりわけ影響を受けていて、
蟹座の木星海王星
山羊座の火星と天王星
牡羊座の金星で、Tスクエアを形成しています。

 

頂点に来るのが牡羊座の金星ですが、かなり強調されています。
彼女の書く恋愛は純愛がメインです。
主人公は利益や打算を抜いて、純粋な憧れや尊敬を持っていることが多いです。
ですが、たまにびっくりするくらい気が強い面が見えます。
たとえば『レベッカ』の序盤で、主人公を雇っている夫人への描き方。
世間的には良い人物と見なされるが、実際は世間体と醜い虚栄心の塊です。
地位の高い人物には親切にし、年下の小娘である主人公を見下しているイヤな女です。
デュ・モーリアは時に、こういう人物を徹底的に批判している話を書いています。
特に、見た目や世間体や地位や名誉という「外面」だけにとらわれている人物と、
それを賞賛する人々への批判が鋭い。
この傾向は20代の頃の初期の作品に特に強く、
見ていると胸がスカッとすることがあります。
山羊座の火星と天王星の影響も強そうです。

 

デュ・モーリアは人付き合いが苦手だったいいますが、
この配置じゃ無理もないと思います。
人付きあいそのものが嫌いなのではなく、
まったく関係ない大勢の人たちの中に入っていって、

何の中身もないお喋りをしたり、
愛想を振りまくことやおべっかを使うことが嫌いなのではと思います。
火星と天王星アスペクトはかなり緊張感が強いので。
そもそも牡牛座って親しい人たちとの付き合いはともかく、
器用に立ち回るのは苦手なイメージがあります。
ところで、デュ・モーリア両性愛者だったという説がありますが、
これだけ緊張感の強いTスクエアがあって、
何にもない普通の人だった方が驚くと思います。
ちなみに、彼女自身はやんちゃなお転婆で、男の子に生まれたかった、と回顧録に書いたそうです。

このあたりは金星と火星のハードっぽいです。


彼女のホロスコープを見ていて思いましたが、
中原中也に似ているなあ・・・、と。
ちょうど14日違いで、違うのは月と水星と、
Tスクエアの頂点が水星から金星に変わったくらいです。
面白いと思うのですが、デュ・モーリアの作品は、
「自然への回帰」、「原始的な単純と純粋への願望」と「伝統と格式」との摩擦、
がテーマになっているものが多いと後書きにありました。
伝統と格式は、世間の目や常識や良識という嘘に集約されると思いますが、
レベッカ』なんてまさにそういう感じの話です。
これらは、中原さんの詩でいうところの”思惑”に当たると思います。

 

「思惑よ、汝、暗く重き気体よ、
 我が裡より去れよかし!
 われはや単純と静けき呟きと、
 とまれ、清楚のほかを希わず。」(『山羊の歌』「羊の歌」より)

 

この”思惑”については次の詩の「憔悴」でも出てきますが、

誰かに良く思われようとか、うまく得してやろうとか、

どうやら、そういう不純な気持ちのことのようです。
何となく共通しているものがあります。
しいて違いといえば、デュ・モーリア木星海王星がタイトで、
より不思議な雰囲気が強調されているのかもしれません。
中原さんのが火星と天王星の方が強く、より社会への反抗というイメージ。
わたしは二人とも大好きなのですが、けっこう比べると似ていて面白いです。
それぞれの作品の理解にも繋がりますし。