文豪とホロスコープ 推理作家編その2 F・W・クロフツ
フリーマン・ウィルス・クロフツはアイルランド出身の、
イギリスの推理作家です。
元々は技師だったのが、(確か)療養中に推理小説を書き、
40才でデビュー。それから一年に一作品を書いていくことに。
代表作はデビュー作の『樽』、倒叙形式の『クロイドン発12時30分』など。
○『樽』
ある日、港に届いた謎の樽。
その中にはとんでもないものが入っていた・・・
という始まり方をする推理小説です。
これが、とても面白い。
この話は当時としては珍しく、名探偵が出てきません。
名探偵を必要とするような理解の範疇を超えた状況が起こるわけではなく、
常識的な普通の人々が、常識的な捜査と推理をして、
最後に不動の事実を解き明かしていくという、
とても「現実的」な推理小説です。
実際に起こりえるかもしれないし、しっかり読んでいけば答えはわかる。
けれど、ちゃんと推理小説の面白さはおさえている。
犯人がすさまじく狡猾なんですよ。詳しくは言えませんが。
名探偵にリアリティを感じられない人、あり得ない小説が嫌いな人、
しっかりした話が好みの堅実な人にお勧めです。
そこまで怖くもグロくもないですし。
あとは解説にもありましたが、タイトルが格好良い。
日本語でこそ『樽』という冴えない感じですが、原文では『The Cask』(ザ・カスク)。
イギリスですからウィスキー貯蔵用の樽のことをこう呼ぶそうで、
英語の方が明らかに格好良い。
この話に影響された作品として、
鮎川哲也『黒いトランク』、横溝正史『蝶々殺人事件』などがあるそうです。
どちらも名作だそうです。
なるべく、早く読みたいと思います。
○ホロスコープ解説
F・W・クロフツ(1879/6/1 出生時間不明)
双子座の太陽、月は天秤座(確定)、ASCは不明。
一見がっつり風ですが、ホロスコープを見てみると
案外風のエレメント入っていません。太陽と月くらい。
代わりに水と地のエレメントが強いです。
ぱっと目を引くのは牡牛座の水星と冥王星のコンジャンクション。
たしか、コナン・ドイルも同じ組み合わせでしたが、ずいぶん作風は違う。
水星を中心として、魚座の火星と蟹座の金星で小三角を作っています。
ドイルはほとんど水がないので、ここが違いかな?とも思いますが。
金星と火星が絡むと、事件やメロドラマの匂いがしますね。
実際、推理小説の動機の大半は金と女ですが、
『樽』にも両方関わってきます。
そして、この二つが絡むと話が面白くなるのもまた事実。
この話、サスペンスとしてもちゃんと面白いです。
私は謎解きを途中で諦めて読んでいましたが、普通に話として面白かったです。
ここから先ちょっと自信ないですが、
クロフツのホロでちょっと面白いことがありました。
マイナーアスペクトが関わるのですが、
魚座の木星(11度)、牡羊座の土星(13度)、牡牛座の海王星(10度)、双子座の太陽(10度)
と、4星が全てセミセクスタイルを結んでいます。
つまりセミヨドが二つ重なっているわけです。
その中心が土星と海王星・・・
土星のメジャーアスペクトは金星とスクエア、太陽とセクスタイルくらいなのですが、
どうにも、この人は土星が利いている雰囲気があるんですよね。
冒険大好きなドイル(牡羊座金星)とは正反対というか。
クロフツの堅実さ――作品もそうですが、職業は技師、一年に一作品という面も含めて――は、この辺りが原因かなあ、と思います。(推測ですが)
セミヨドはヨドと同じく「動きが取れない状態」を意味するというので。
また、この「動きが取れない状態」とは、
『樽』の中にも色々当て嵌まる言葉です(読めば分かりますが)。
そう考えると、ちょっと面白いですね。