文豪とホロスコープ

星占い&読書好きが主に古今東西の文豪のホロスコープを見ていきます。ほか、読書感想や星占い関連について、日々のつれづれなど。

文豪とホロスコープ 推理作家編その6 アイリッシュ

ウィリアム・アイリッシュアメリカの推理小説家です。
主に本名のコーネル・ウールリッチで執筆していましたが、
日本ではアイリッシュ名義で書いた『幻の女』が超有名なため、
ウィリアム・アイリッシュの方で知られています。
代表作は『黒衣の花嫁』『幻の女』『暁の死線』など。

 

○『幻の女』

ある夜、主人公は名前も素性も知らない女性と食事をし、劇を見る。
妻と喧嘩して、家を飛び出してしまったからだ。
だが、女性と別れた主人公が家に帰ると、妻は死んでいた。
無罪を証明するために女性を探すが、彼女の痕跡は全て消えていて……

 

殺人容疑のかかった主人公の無実を証明できる女性(「幻の女」)を探す、
というストーリーですが、
なぜ女性は見つからないのか? そもそも女性は本当にいたのか?
そして、誰が妻を殺したのか? 徐々に近づいてくる死刑の日付。
この時点でもう面白い。

 

章タイトルが「死刑執行まで~日」という形式で、
けっこうドキドキします。
手がかりがなかなか掴めない時もあって、
女性はまさしく幻そのもの。
最後の50頁くらいは続きが気になって止まらない。

 

ネタバレなので詳しくは言えませんが、
本格推理と言うよりサスペンスという感じで、
ロジックやトリックというより、テクニックに騙される感じ。
わりと反則すれすれっぽい。
多分、これ皆騙されるんじゃないかなあ、と思います。
古典とされる話ですが、絶対面白い。
ただし、ウィ○ペディアだけは絶対に見ないでください。

 

また、書き出しが名文として有名。

 「夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった」(稲葉明雄氏訳)

 

このように擬人化や比喩を多用した文章は見事で、
サスペンスの詩人と言われてるそうです。
SFの詩人のレイ・ブラッドベリみたいですね。

 

ちなみに、日本では1942年に出た時、江戸川乱歩
「絶対に訳して読むべき本」って言ったことで有名になったらしいですね。

この人も本当、見る目はあるなあ。

セイヤーズの『ナインテイラーズ』も紹介していたらしいですし。

 

ホロスコープ解説

ウィリアム・アイリッシュ(1903/12/4 出生時間不明)

 

太陽は射手座、月は牡牛か双子座、ASCは不明。

射手座で太陽、水星、天王星がゆるいですが合でステリウム。
また、射手座の水星天王星合に冥王星オポジション
さらに魚座木星がスクエアで、Tスクエアを作っています。
かなりの緊張感がある配置です。
他の作品(『暁の死線』とか)でもそうですが、
イムリミットを想定して、時間切れまでに無実を証明しなければならない
という形式が好きなようです。
周りの誰も信じてくれない、頼れない孤立無援の状況で、
自分の力だけで状況を打破しなければならないとか。
この人自身、ちょっと人間嫌いの面があったらしいので、
実体験かなあ、とも思います。
自分の個性を前面に押し出してしまって、どうしても孤立しがちで、
本当のことを言ったり、自分のしたいことをして何が悪い、という感じ。
水星が絡むTスクエアって結構キツい。
しかし、魚座木星が関わっているあたりはサスペンスの詩人の要素が垣間見えます。

魚座木星っていうと、ゲーテとかです。あとはポーとか。

どっちも詩人としても有名ですね。

 

ちなみに、プロレタリア文学小林多喜二と三日違い生まれ。
そう言われて見れば、『蟹工船』と似たところがある気がしてきます。
孤立無援で自分たちの力だけで戦わなければならないとか。
どちらかといえば、
同じ文庫に入っていた『党生活者』の方に雰囲気が近い感じがしますね。
追い詰められ方はアイリッシュの方が上ですが。

月は不明ですが、おそらく双子座じゃないかなあ、と思います。
詳しくは書けませんが、文章で騙される面が大きい。
カーもそうですが、射手座双子座の強い作家って、
トリックやロジック以外に書き方から凝っているところがあるので、
なんだか双子座っぽいなあ、と思います。

 

ちなみに、金星は天秤座で山羊座の火星ときっちりスクエア。
この作品、タイトルにある「幻の女」を初めとして、
登場人物、特に女性のキャラが濃い。
しかも、けっこう男性を翻弄する小悪魔的な面を持つ女性が多い気がします。
騙して、振り回して、そしてついには破滅させてしまうような、
美しいけれど不実な女性。
多少ネタバレですが、ヒロインが情報を持つ男に近づく辺り、
かなり緊張感とリアリティがあって面白いなあ、と感じた覚えがあります。
ヒロインは清純派に書いてあるはずですが、実際、結構なことしています。
作者が女性に対して裏切られた経験があるというか、かなりの不信感を持っていたんじゃないかなあ。
本当かわかりませんが、同性愛者だったという噂があるそうなので、
やっぱり女性に恐怖心はあったのかなあ、と思います。
最初から最後まで『幻の女』に振り回される運命だったのでしょう。

 

ちなみに、アイリッシュフィッツジェラルドが好きだったらしいですね。
アイリッシュの金星が、フィッツジェラルドの水星金星に合しています。
結構文章の中にも影響が見られますが、
小林多喜二志賀直哉のファンだったのに似てて、ちょっと面白いですね。
(あっちは山羊座水瓶座の繋がりでしょうけれど)